物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第2章 原子と原子核
止まっている原子核 Y(質量 \(m_2\)・電荷 \(Z_2e\))に,原子核 X(質量 \(m_1\)・電荷 \(Z_1e\))を速さ \(v_0\) で打ちこむ。2 つは静電気力で反発しあい,距離 \(r_0\) まで近づくと核反応が起こる。 \(r_0\) での静電気力の位置エネルギーは \(\dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\)。X の運動エネルギー \(K\) がこれと同じなら,\(r_0\) まで届くだろうか。
必要な運動エネルギーは,位置エネルギー \(\dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\) の \(\dfrac{m_1 + m_2}{m_2}\) 倍。運動エネルギーを全部は近づくのに使えないからである。
なぜ全部は使えないのか。いちばん近づく瞬間に注目する。
いちばん近づく瞬間の速さ(解説①),運動エネルギーの分け前(解説②)の順に見る。
Y から見ると,X は近づいてきて,止まり,また離れていく。止まって見える瞬間(相対速度 0)が,いちばん近づく瞬間。
相対速度が 0 とは,地面から見て 2 つが同じ速度 \(v\) で動いているということ。2 つともまだ止まっていない。
はたらくのは互いの静電気力(作用・反作用)だけなので,運動量の和は変わらない。
\(m_1v_0 = (m_1 + m_2)v\)
\(v = \dfrac{m_1}{m_1 + m_2}v_0\)
いちばん近づく瞬間にも残る運動エネルギーに,\(v\) を入れる。\(K = \dfrac{1}{2}m_1v_0{}^2\) なので,
\(\dfrac{1}{2}(m_1 + m_2)v^2 = \dfrac{m_1}{m_1 + m_2}K\)
このぶんは,運動エネルギーのまま残り,位置エネルギーになれない(棒の斜線)。
位置エネルギーになれるのは残りの \(\dfrac{m_2}{m_1 + m_2}K\) だけ。これが \(r_0\) での位置エネルギーに届けば核反応が起こる。
\(\dfrac{m_2}{m_1 + m_2}K = \dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\)
\(K = \dfrac{m_1 + m_2}{m_2}\cdot\dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\)
「\(K = \dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\) で足りる」は,X の運動エネルギーが全部位置エネルギーになると考えている。いちばん近づいた瞬間も 2 つは速さ \(v\) で動いていて,運動エネルギーが残る。この \(K\) では,\(r_0\) の手前ではね返る(図の帯の「K = kZ₁Z₂e²/r₀」を押して確かめられる)。
\(m_2\) が \(m_1\) よりずっと大きいと,Y はほとんど動かず,\(\dfrac{m_1 + m_2}{m_2} \fallingdotseq 1\)。結論の式は \(K \fallingdotseq \dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\) となり,X の運動エネルギーが全部位置エネルギーに変わる場合(止まった壁に向かって打ちこむ場合)と合う。
相対速度が 0 = 2 つが同じ速度で動いている。運動量保存則で \(v = \dfrac{m_1}{m_1 + m_2}v_0\)。
近づくのに使えるのは \(\dfrac{m_2}{m_1 + m_2}K\) だけ。だから \(K = \dfrac{m_1 + m_2}{m_2}\cdot\dfrac{kZ_1Z_2e^2}{r_0}\)。
\({}^{1}_{1}\mathrm{H}\) を止まっている \({}^{7}_{3}\mathrm{Li}\) に打ちこむと,\(m_1 : m_2 = 1 : 7\) で,近づくのに使えるのは \(\dfrac{7}{8}\)。\(\dfrac{ke^2}{r_0} = 0.014\) MeV とすると,
\(K = 1\times3\times0.014\times\dfrac{8}{7} = 0.048\ \text{MeV}\)
逆に,Li を止まっている H に打ちこむと,使えるのは \(\dfrac{1}{8}\) だけで,
\(K = 3\times0.014\times8 \fallingdotseq 0.34\ \text{MeV}\)
要る位置エネルギーは同じなのに,必要な運動エネルギーは 7 倍。核反応を起こすには,軽いほうを打ちこむのが有利。
なめらかな床の上で,止まっている物体(質量 \(m_2\))に,ばねを付けた物体(質量 \(m_1\))を速さ \(v_0\) で当てる。ばねがいちばん縮む瞬間も,2 つは同じ速度で動いている。ばねにたくわえられるのは,静電気力の位置エネルギーと同じく,運動エネルギーのうちの \(\dfrac{m_2}{m_1 + m_2}\) 倍だけになる。
2 つの物体がいちばん近づく(いちばん縮む)問題は,同じ速度になる瞬間に,運動量保存則で速さを,エネルギー保存則で距離やエネルギーを決める。