物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第2章 原子と原子核
ウラン 238 の原子核は,α 崩壊と β 崩壊をくり返して,安定な鉛 206 に変わる。α 崩壊と β 崩壊は,それぞれ何回だろうか。
質量数を変えるのは α 崩壊だけなので,まず質量数の差で α 崩壊の回数を決め,次に原子番号で β 崩壊の回数を決める。
なぜ質量数から決めるのか。1 回の崩壊で何が変わるかから見る。
1 回の崩壊で何が変わるか(解説①),質量数で α の回数(解説②),原子番号で β の回数(解説③)の順に見る。最後に,実際の順番で数えて確かめる。
陽子 2 個と中性子 2 個のかたまり(α 粒子 \({}^{4}_{2}\mathrm{He}\))が飛び出す。崩壊の前後で,質量数の和と原子番号の和はそれぞれ変わらない。
\({}^{A}_{Z}\mathrm{X} \to {}^{A-4}_{Z-2}\mathrm{Y} + {}^{4}_{2}\mathrm{He}\)
原子核の中の中性子 1 個が陽子に変わり,電子が飛び出す。陽子と中性子の数の合計(質量数)は変わらず,陽子が 1 個増える。
\(\mathrm{n} \to \mathrm{p} + \mathrm{e}^-\)
横に原子番号,縦に質量数をとると,α 崩壊は左へ 2・下へ 4,β 崩壊は右へ 1の矢印になる。
β 崩壊では電子が出ていくが,原子番号は減らない。中性子が陽子に変わるので,原子番号は 1 増える。
β 崩壊では質量数は変わらないので,質量数の減り 238 − 206 は,すべて α 崩壊による。
1 回で 4 ずつ減るので,
\(238 - 4m = 206\)
\(4m = 32 \qquad m = 8\)
原子番号は,α 崩壊で \(2m\) 減り,β 崩壊で \(n\) 増えて,92 から 82 になる。
\(92 - 2m + n = 82\)
\(92 - 16 + n = 82\)
α 崩壊だけなら原子番号は 76 まで下がる。鉛の 82 までβ 崩壊で 6 戻すので,
\(n = 6\)
β 崩壊で原子番号を 1 減らし,\(92 - 2m - n = 82\) とすると,\(n = -6\) と負になり,回数として合わない。
ウラン 238 から鉛 206 までの実際の順(ウラン系列)は,
\({}^{238}\mathrm{U}\) →α \({}^{234}\mathrm{Th}\) →β \({}^{234}\mathrm{Pa}\) →β \({}^{234}\mathrm{U}\) →α \({}^{230}\mathrm{Th}\) →α \({}^{226}\mathrm{Ra}\) →α \({}^{222}\mathrm{Rn}\) →α \({}^{218}\mathrm{Po}\) →α \({}^{214}\mathrm{Pb}\) →β \({}^{214}\mathrm{Bi}\) →β \({}^{214}\mathrm{Po}\) →α \({}^{210}\mathrm{Pb}\) →β \({}^{210}\mathrm{Bi}\) →β \({}^{210}\mathrm{Po}\) →α \({}^{206}\mathrm{Pb}\)
数えると α 崩壊が 8 回,β 崩壊が 6 回で,解説②③と合う。図の「▶ 再生」で,道を 1 本ずつたどれる。
α 崩壊は質量数 −4・原子番号 −2,β 崩壊は質量数そのまま・原子番号 +1。
質量数を変えるのは α 崩壊だけ。まず質量数で α,次に原子番号で β。
質量数は α 崩壊で 4 ずつ減るだけなので,質量数を 4 で割った余りは,何回崩壊しても変わらない。ウラン 238 も鉛 206 も余りは 2。
\(238 = 4 \times 59 + 2 \qquad 206 = 4 \times 51 + 2\)
天然に見られる崩壊の系列は,余りで分かれる(トリウム系列は余り 0,ウラン系列は余り 2,アクチニウム系列は余り 3)。たとえばポロニウム 210(余り 2)は,ウラン 238・ウラン 235・トリウム 232 のうち,余りの同じウラン 238 の系列に入る。
α 崩壊・β 崩壊のたびに,質量数と原子番号は決まった数だけ変わる。足し算の順番を入れ替えても合計は同じなので,途中の順番がどうでも,回数ははじめと終わりの原子核だけで決まる。
β 崩壊で出る電子は,もともと原子核の中にあったものではなく,中性子が陽子に変わるときに生まれる。このとき,目に見えないもう 1 つの粒子(反ニュートリノ)も出るので,電子のエネルギーは 1 つに決まらず,ばらつく。