物理 > 動く解説 > 物理 第3編 波|第1章 波の伝わり方

定在波:進む波を足すと,なぜ進まない?

❓ 1. 疑問と結論

右へ進む波と左へ進む波を重ねると,その場で上下するだけの,進まない波(定在波)ができる。2 つとも進む波なのに,足すとなぜ進まないのだろうか。

図では,右端の壁で反射させて,左へ進む波 \(y_2\) を作っている(入射波 \(y_1\)・反射波 \(y_2\)・合成波 \(y_x\))。

🎯 結論:時間だけの \(\sin\) と位置だけの \(\cos\) のかけ算に分かれる

\(y = 2A\sin\dfrac{2\pi t}{T}\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\)

時刻 \(t\) が入るのは \(\sin\) だけ,位置 \(x\) が入るのは \(\cos\) だけ。形はその場で伸び縮みするだけなので,波は進まない。

💡
定在波(定常波)……波長と振幅が同じで,向かい合って進む 2 つの波が重なってできる,進まない波。

なぜこう分かれるのか,式で確かめる。

📚 2. 解説と確かめ

2 つの波の式(解説①),和の公式(解説②),振幅と節(解説③)の順に見る。

↔️ 解説①:向かい合って進む 2 つの波の式

  1. 右へ進む波

    正弦波の式で,\(x\) の前がひく。

    \(y_1 = A\sin 2\pi\left(\dfrac{t}{T} - \dfrac{x}{\lambda}\right)\)

  2. 左へ進む波

    \(x\) の前がたす。

    \(y_2 = A\sin 2\pi\left(\dfrac{t}{T} + \dfrac{x}{\lambda}\right)\)

  3. 足した波

    同じ点・同じ時刻の 2 つの変位を足す(重ね合わせの原理)。

    \(y = y_1 + y_2\)

🧮 解説②:和の公式でかけ算にする

  1. 和の公式

    \(y_1\),\(y_2\) の \(\sin\) の中を \(\alpha\),\(\beta\) とすると,

    \(\sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\dfrac{\alpha + \beta}{2}\cos\dfrac{\alpha - \beta}{2}\)

  2. 和の半分:\(x\) が消える

    \(-\dfrac{x}{\lambda}\) と \(+\dfrac{x}{\lambda}\) が打ち消し合い,\(t\) だけが残る。

    \(\dfrac{\alpha + \beta}{2} = \dfrac{2\pi t}{T}\)

  3. 差の半分:\(t\) が消える

    \(\dfrac{t}{T}\) どうしが打ち消し合い,\(x\) だけが残る。\(\cos(-\theta) = \cos\theta\) なので,マイナスは外せる。

    \(\dfrac{\alpha - \beta}{2} = -\dfrac{2\pi x}{\lambda}\)

  4. かけ算に分かれる

    \(y = A(\sin\alpha + \sin\beta)\) に入れると,

    \(y = 2A\sin\dfrac{2\pi t}{T}\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\)

📏 解説③:\(\cos\) の部分が振幅,\(\cos = 0\) の点が節

  1. \(t\) は \(\sin\) だけ

    どの点も,同じ周期 \(T\)・同じリズムで上下する(同時にいちばん高く,同時に 0)。

  2. 振幅は位置で決まる

    位置 \(x\) の点の振幅は,\(\cos\) の部分で決まる。

    \(2A\left|\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\right|\)

  3. \(\cos = 0\) の点が節

    \(\dfrac{2\pi x}{\lambda} = \dfrac{\pi}{2},\ \dfrac{3\pi}{2},\ \cdots\) の点,つまり \(x = \dfrac{\lambda}{4},\ \dfrac{3\lambda}{4},\ \cdots\) は,いつでも変位 0(節)。節と節の間は \(\dfrac{\lambda}{2}\)。

  4. だから進まない

    形はいつも \(\cos\) の形のまま,高さが \(\sin\) 倍に伸び縮みするだけ。山の位置も節の位置も動かない。

図では壁の位置を \(L = \lambda\) にしてあるので,節は \(x = \dfrac{L}{4}\),\(\dfrac{3}{4}L\) の 2 点になる。

✅ 確かめ:節では,2 つの波がいつも逆向き

\(x = \dfrac{\lambda}{4}\) では,\(y_1\),\(y_2\) の \(\sin\) の中は \(\theta - \dfrac{\pi}{2}\),\(\theta + \dfrac{\pi}{2}\)(\(\theta = \dfrac{2\pi t}{T}\))で,ちょうど \(\pi\) ずれる。2 つの変位はいつも逆向きで,打ち消し合う。

\(y_1 + y_2 = A\sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{2}\right) + A\sin\left(\theta + \dfrac{\pi}{2}\right) = -A\cos\theta + A\cos\theta = 0\)

⚠️ つまずき

「進む波どうしを足せば,進む波になるはず」と思いがち。同じ向きに進む 2 つの波を足すと進む波のままだが,向かい合って進む 2 つの波では,\(t\) と \(x\) が別々の因子に分かれて,進まなくなる。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

🧱 壁ではね返る波(同位相の反射)

原点 O の振動が速さ \(v\) で正の向きに伝わり,O から \(L\) の壁で同位相に(山が山のまま)反射するとき,点 \(x\) に届く入射波と反射波は,

\(y_1 = A\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t - \dfrac{x}{v}\right)\)

\(y_2 = A\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t - \dfrac{2L - x}{v}\right)\)

反射波の遅れは,O → 壁 → 点 \(x\) の道のり \(2L - x\) を進む時間。和の公式で,

\(y = 2A\sin\dfrac{2\pi}{T}\left(t - \dfrac{L}{v}\right)\cos\dfrac{2\pi(L - x)}{\lambda}\)

やはり時間だけの \(\sin\) と位置だけの \(\cos\) のかけ算。壁 \(x = L\) では \(\cos 0 = 1\) なので,壁は腹。節は壁から \(\dfrac{\lambda}{4}\),\(\dfrac{3\lambda}{4}\),… の所。

🔁 逆位相の反射なら,壁は節

壁で山が谷になって返る(逆位相の反射)ときは,壁で 2 つの波の変位がいつも逆向きになり,打ち消し合う。壁は節になり,腹は壁から \(\dfrac{\lambda}{4}\) の所。どちらの反射でも,節と節の間(腹と腹の間)は \(\dfrac{\lambda}{2}\)。