物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第1章 電子と光

光電効果:飽和電流を決めるのは?

❓ 1. 疑問と結論

光電管の陰極に光を当てると,電子が飛び出して陽極に届き,電流が流れる。陽極の電圧を上げていくと,電流は増え,ある所から一定になる(飽和電流)。では,飽和電流をもっと大きくするには,電圧をもっと上げればよいだろうか。

🎯 結論:決めるのは光の強さ

電圧をいくら上げても,飽和電流は大きくならない。飽和電流を決めるのは光の強さ(光子の数)。電圧が変えるのは,飛び出した電子のうち陽極に届く割合だけ。

\(I = eN\)
💡
飽和電流……陽極の電圧を十分に上げたときの,一定になった電流。飛び出した電子が全部陽極に届いている

なぜ電圧では決まらないのか。「飛び出す数」と「そのうち届く数」を分けて考える。

📚 2. 解説と確かめ

電流の正体(解説①),電圧が変えるもの(解説②),光を強くしたとき(確かめ)の順に見る。

⚡ 解説①:電流 = 1 秒に届く電気量

  1. 電流は届く電子の数で決まる

    電流は,1 秒に陽極へ届く電気量。電子 1 個の電気量を \(e\),1 秒に届く電子の数を \(N\) とすると,

    \(I = eN\)

  2. 飛び出す数は光子の数で決まる

    光子 1 個が電子 1 個を飛び出させる。1 秒に当たる光子の数は光の強さで決まるので,光の強さが同じなら,1 秒に飛び出す電子の数は一定。電圧には,よらない。

🔌 解説②:電圧が変えるのは,届く割合

  1. 電圧が低いと一部しか届かない

    電子は,いろいろな向き・速さで飛び出す。陽極の電圧が低いうちは,向きによっては陽極に届かない(図の灰の電子)。

  2. 電圧を上げると届く割合が増える

    電圧を上げると,電子は陽極に引きつけられ,届く割合が増える。だから電流が増える。

  3. 全部届くと頭打ち

    全部が届くと,1 秒に届く数 = 1 秒に飛び出す数。それ以上電圧を上げても \(N\) は増えないので,電流は一定(飽和電流)。

⚠️ つまずき

電圧を上げると,飛び出す電子が増える? 飛び出す数は光(光子の数)が決める。電圧が変えるのは,そのうち陽極に届く割合だけ。

電子が速くなるから,電流は増え続ける? 電流は 1 秒に届く電気量 \(eN\)。電子が速くなっても,届く数 \(N\) が増えなければ電流は増えない。

✅ 確かめ:光を 2 倍に強くすると

  1. 光子の数が 2 倍

    光を 2 倍に強くすると,1 秒に当たる光子の数が 2 倍。飛び出す電子の数も 2 倍になる。

  2. 飽和電流も 2 倍

    届く割合の変わり方は同じなので,どの電圧でも電流は 2 倍。飽和電流も 2 倍になる。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

🔻 阻止電圧は,光の強さによらない

陽極の電圧を負にしていくと,電子は押し戻され,電流が 0 になる(阻止電圧 \(V_0\))。届くかどうかを決めるのは,いちばん速い電子の運動エネルギー \(K_0 = h\nu - W\) で,\(eV_0 = K_0\)。\(K_0\) は光子 1 個のエネルギーで決まるので,光を強くしても阻止電圧は同じ(上の「確かめ」の図で,2 本の曲線は同じ電圧で 0 になる)。

🔢 1 秒に何個の光子が当たっているか

波長 \(4.2\times10^{-7}\) m の紫の光なら,光子 1 個のエネルギーは,波の基本式 \(c = \nu\lambda\) から \(h\nu = \dfrac{hc}{\lambda} \fallingdotseq 4.7\times10^{-19}\) J(\(h = 6.6\times10^{-34}\) J·s,\(c = 3.0\times10^{8}\) m/s)。強さ \(1.0\times10^{-3}\) W(1 秒に \(1.0\times10^{-3}\) J)の光では,1 秒に当たる光子の数は

\(N = \dfrac{1.0\times10^{-3}}{4.7\times10^{-19}} \fallingdotseq 2.1\times10^{15}\)

光子 1 個が電子 1 個を飛び出させ,全部が陽極に届くなら,飽和電流は \(I = eN \fallingdotseq 3.4\times10^{-4}\) A になる。