物理 > 動く解説 > 物理基礎 第1編 運動とエネルギー|第2章 運動の法則

垂直抗力は いつも mg?

❓ 1. 疑問と結論

水平な床の上の物体なら,垂直抗力 \(N\) は重力とつりあって \(N = mg\)。では,斜面に置いたときや,ひもで斜め上に引いたときも,\(N\) はいつも \(mg\) だろうか。

🎯 結論:面に垂直な向きのつりあいで決まる

垂直抗力 \(N\) は \(mg\) と決めつけない。面に垂直な向きの力のつりあいを書いて決める。
💡
垂直抗力……面が物体を押す力。向きは面に垂直で,面から離れる向き。大きさは「どれだけ押しつけられているか」で決まり,決まった値をもたない

なぜ場面で変わるのか。面に垂直な向きの力を 1 つずつ数えて確かめる。

📚 2. 解説と確かめ

水平な床(解説①),斜面(解説②),斜め上に引く(解説③)の順に見る。最後に,角を端まで動かして確かめる。

🧱 解説①:水平な床

なめらかな水平の床の上に,質量 \(m\) の物体を置く。

  1. 面に垂直な向きの力を数える

    この面は水平なので,面に垂直な向き = 鉛直。はたらくのは下向きの重力 \(mg\) と,上向きの垂直抗力 \(N\) の 2 つだけ。

  2. 離れないから,つりあい

    物体は床から離れず,床にめりこみもしない。この向きの加速度は 0 なので,

    \(N - mg = 0\)

    \(N = mg\)

💬 補足

\(N = mg\) になるのは,この場面でそうなっただけ。公式として覚えるものではない。

📐 解説②:斜面の上

傾きの角が \(\theta\) の斜面に,同じ物体を置く。

  1. 重力を斜面の向きに分ける

    重力 \(mg\) を,斜面に沿う向きと斜面に垂直な向きに分ける。角 \(\theta\) をはさむのは斜面に垂直な成分なので,

    沿う成分 \(= mg\sin\theta\),垂直な成分 \(= mg\cos\theta\)

  2. 斜面に垂直な向きのつりあい

    物体は斜面から離れないので,この向きの加速度は 0。

    \(N - mg\cos\theta = 0\)

    \(N = mg\cos\theta\)

  3. \(mg\) より小さい

    \(\cos\theta\) は 1 より小さいので,\(N\) は \(mg\) より小さい。斜面が急になるほど小さくなる。

⚠️ 注意

斜面に沿う向きはつりあっていない(なめらかなら \(mg\sin\theta\) ですべり出す)。つりあうのは,面に垂直な向きだけ。

🪢 解説③:ひもで斜め上に引く

水平な床にもどり,床から \(\theta\) の向きに,力 \(F\) でひもを引く。

  1. 鉛直の力を並べる

    上向き:垂直抗力 \(N\) と,\(F\) の縦の成分 \(F\sin\theta\)。下向き:重力 \(mg\)。

  2. 鉛直のつりあい

    物体は床の上をすべるだけで,浮き上がらない。

    \(N + F\sin\theta - mg = 0\)

    \(N = mg - F\sin\theta\)

  3. 引くほど小さくなる

    斜め上に強く引くほど \(F\sin\theta\) が大きくなり,\(N\) は小さくなる。\(F\sin\theta = mg\) になると \(N = 0\)(浮き上がる)。

🧮 確かめ:角を端まで動かすと

  1. 斜面を水平にする(\(\theta \to 0^\circ\))

    \(\cos 0^\circ = 1\) なので \(N = mg\)。解説①と同じになる。

  2. 斜面を立てる(\(\theta \to 90^\circ\))

    \(\cos 90^\circ = 0\) なので \(N \to 0\)。かべに沿ってそのまま落ちる物体は,かべから押されない。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

📏 垂直抗力が変われば,摩擦力も変わる

あらい床の動摩擦力は \(\mu' N\)(\(\mu'\) は動摩擦係数)。斜め上に引くと \(N = mg - F\sin\theta\) と小さくなるので,摩擦力も小さくなる。重い荷物を少し上向きに引くと楽なのは,このため。

斜面でも同じで,最大摩擦力は \(\mu N = \mu mg\cos\theta\)。すべり出す角が \(\tan\theta = \mu\) で決まるのは,沿う力 \(mg\sin\theta\) とこれをくらべるから。

🛗 エレベーターの中では,つりあわない

ここまでは「面に垂直な向きの加速度が 0」だったのでつりあいで決まった。床ごと上下に加速するときは,つりあいではなく運動方程式になる。

\(ma = N - mg\) → \(N = m(g + a)\)

上向きに加速する(上がり始め・下がり終わり)と \(N > mg\) で体が重く感じ,下向きに加速すると \(N < mg\) で軽く感じる。自由落下なら \(a = -g\) で \(N = 0\)(無重量)。

💡 もう一歩:体重計が示すのは \(N\)

体重計は「のせたものから押される力」= 垂直抗力の反作用を測っている。だからエレベーターの中では,体重が変わっていないのに表示が変わる。測っているのは \(mg\) ではなく \(N\)。