物理 > 動く解説 > 物理基礎 第1編 運動とエネルギー|第2章 運動の法則
水平な床の上の物体なら,垂直抗力 \(N\) は重力とつりあって \(N = mg\)。では,斜面に置いたときや,ひもで斜め上に引いたときも,\(N\) はいつも \(mg\) だろうか。
鉛直の力は \(mg\) と \(N\) だけ。\(N = mg\)。
斜面に垂直な向きは \(mg\cos\theta\) と \(N\)。\(N = mg\cos\theta\)。
なぜ場面で変わるのか。面に垂直な向きの力を 1 つずつ数えて確かめる。
水平な床(解説①),斜面(解説②),斜め上に引く(解説③)の順に見る。最後に,角を端まで動かして確かめる。
なめらかな水平の床の上に,質量 \(m\) の物体を置く。
この面は水平なので,面に垂直な向き = 鉛直。はたらくのは下向きの重力 \(mg\) と,上向きの垂直抗力 \(N\) の 2 つだけ。
物体は床から離れず,床にめりこみもしない。この向きの加速度は 0 なので,
\(N - mg = 0\)
\(N = mg\)
\(N = mg\) になるのは,この場面でそうなっただけ。公式として覚えるものではない。
傾きの角が \(\theta\) の斜面に,同じ物体を置く。
重力 \(mg\) を,斜面に沿う向きと斜面に垂直な向きに分ける。角 \(\theta\) をはさむのは斜面に垂直な成分なので,
沿う成分 \(= mg\sin\theta\),垂直な成分 \(= mg\cos\theta\)
物体は斜面から離れないので,この向きの加速度は 0。
\(N - mg\cos\theta = 0\)
\(N = mg\cos\theta\)
\(\cos\theta\) は 1 より小さいので,\(N\) は \(mg\) より小さい。斜面が急になるほど小さくなる。
斜面に沿う向きはつりあっていない(なめらかなら \(mg\sin\theta\) ですべり出す)。つりあうのは,面に垂直な向きだけ。
水平な床にもどり,床から \(\theta\) の向きに,力 \(F\) でひもを引く。
上向き:垂直抗力 \(N\) と,\(F\) の縦の成分 \(F\sin\theta\)。下向き:重力 \(mg\)。
物体は床の上をすべるだけで,浮き上がらない。
\(N + F\sin\theta - mg = 0\)
\(N = mg - F\sin\theta\)
斜め上に強く引くほど \(F\sin\theta\) が大きくなり,\(N\) は小さくなる。\(F\sin\theta = mg\) になると \(N = 0\)(浮き上がる)。
\(\cos 0^\circ = 1\) なので \(N = mg\)。解説①と同じになる。
\(\cos 90^\circ = 0\) なので \(N \to 0\)。かべに沿ってそのまま落ちる物体は,かべから押されない。
\(N\) は,その向きのほかの力の合計とつりあう大きさになる。場面ごとに書き出す。
水平な床 \(N = mg\)/斜面 \(N = mg\cos\theta\)/斜め上に引く \(N = mg - F\sin\theta\)。
\(N = mg\) は,水平な床で,ほかに縦向きの力が無いときだけ。
あらい床の動摩擦力は \(\mu' N\)(\(\mu'\) は動摩擦係数)。斜め上に引くと \(N = mg - F\sin\theta\) と小さくなるので,摩擦力も小さくなる。重い荷物を少し上向きに引くと楽なのは,このため。
斜面でも同じで,最大摩擦力は \(\mu N = \mu mg\cos\theta\)。すべり出す角が \(\tan\theta = \mu\) で決まるのは,沿う力 \(mg\sin\theta\) とこれをくらべるから。
ここまでは「面に垂直な向きの加速度が 0」だったのでつりあいで決まった。床ごと上下に加速するときは,つりあいではなく運動方程式になる。
上向きに加速する(上がり始め・下がり終わり)と \(N > mg\) で体が重く感じ,下向きに加速すると \(N < mg\) で軽く感じる。自由落下なら \(a = -g\) で \(N = 0\)(無重量)。
体重計は「のせたものから押される力」= 垂直抗力の反作用を測っている。だからエレベーターの中では,体重が変わっていないのに表示が変わる。測っているのは \(mg\) ではなく \(N\)。