物理 > 動く解説 > 物理 第2編 熱と気体|第1章 気体のエネルギーと状態変化

京都大:囲む面積

❓ 1. 疑問と結論

なめらかに動くピストンでふたをした気体を,膨らませる → 体積そのままで冷やす → 縮める → 体積そのままで温めるの 4 つの過程でひと回りさせ,もとの状態に戻す。ひと回りで取り出せる仕事と,熱効率はどうなるだろうか。

🎯 結論:囲む面積が正味の仕事

\[ \text{正味の仕事} = \text{囲む面積} = \text{よこの幅} \times \text{たての高さ} \qquad e = \dfrac{\text{正味の仕事}}{\text{もらった熱}} \]

体積が変わらない 2 本では仕事は 0 なので,膨らむ過程と縮む過程の面積の差し引きが,そのまま囲む面積になる。

📚 2. 解説

① 4 つの過程と平行四辺形 → ② 線の下の面積が仕事 → ③ どの過程で熱をもらうか → ④ 熱効率,の順に見る。

① 4 つの過程をひと回りすると平行四辺形

② 線の下の面積が仕事

  1. 膨らむ過程

    気体が外へする仕事は \(\displaystyle\int P\,dV\)=その線の下の面積(図の緑)。

  2. 縮む過程

    体積が減るので符号は負。その線の下の面積の分だけ,気体は仕事をされる(図の青の斜線)。

  3. たての 2 本

    体積が変わらないので \(P\,\Delta V = 0\)。仕事は 0。

  4. 差し引き

    緑から青を引いた残りが,平行四辺形の中。つまり囲む面積がひと回りの正味の仕事。平行四辺形なので,よこの幅(体積の増え)とたての高さ(圧力の差)をかけるだけで出る。

③ 熱をもらうのは,温度が高くなる 2 つの過程

  1. 温度は \(PV\) に比例

    状態方程式 \(PV = nRT\) より \(T \propto PV\)。グラフでは,原点とその点でつくる長方形の面積が温度のめやすになる。

  2. 大きくなるのは 2 つ

    ひと回りさせると,長方形が大きくなる(温度が高くなる)のは「膨らみながら圧力も大きくなる過程」と「体積そのままで圧力が大きくなる過程」の 2 つ。残りの 2 つでは温度が低くなる。

  3. 熱は \(Q = \Delta U + W\)

    温度が高くなる過程では内部エネルギーが増え,仕事も外へするか 0 なので \(Q > 0\)=熱をもらう。残りの 2 つは逆で,熱を捨てる。 体積そのままの過程は仕事が 0 でも,内部エネルギーが増える分だけ熱をもらうのがポイント。

④ 熱効率

  1. 定義

    熱効率 \(e\) は,もらった熱のうちどれだけが仕事になったかの割合。\(e = \dfrac{\text{正味の仕事}}{\text{もらった熱}}\)。

  2. まちがえやすい所

    分母に入れるのはもらった熱の合計(\(\Delta U\) も足したもの)。仕事だけを「吸収した熱」と考えると,熱効率を大きく見まちがえる。

  3. 捨てる熱

    もらった熱 − 捨てた熱 = 正味の仕事(ひと回りで \(\Delta U\) の和は 0 だから)。棒の残りの部分が,外へ捨てられる熱。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

🔄 反時計回りに回すとどうなる?

同じ平行四辺形を反時計回りにたどると,膨らむときの圧力のほうが小さくなるので,正味の仕事は負(外から仕事をされる)。 温度が高くなる過程と低くなる過程が入れかわり,低い温度の所で熱をもらって高い温度の所で熱を捨てる。これが冷蔵庫・ヒートポンプの向き。

🌡 等温線と見くらべる

\(T \propto PV\) なので,温度が同じ点を結ぶと反比例のグラフ(等温線)になる。平行四辺形の 4 つの頂点を等温線と見くらべると, いちばん温度が高いのは「膨らみ終わった頂点」,いちばん低いのは「縮み終わった頂点」。温度の高い所で熱をもらい,低い所で捨てている。

📈 効率を大きくするには

効率は (囲む面積)÷(もらった熱)。平行四辺形を縦長にする(圧力の差を大きくする)と面積は増えるが, 同時に温度の差も大きくなってもらう熱も増える。どこまで効率を上げられるかの上限を与えるのが,熱力学第二法則とカルノーサイクルの話になる。

🧮 単原子分子のとき

この図では \(\Delta U = \dfrac{3}{2}nR\,\Delta T\)(単原子分子)で棒の長さを描いている。2 原子分子なら \(\dfrac{5}{2}nR\,\Delta T\) になり, もらう熱が増えるぶん効率は小さくなるが,「囲む面積が正味の仕事」「仕事だけでなく \(\Delta U\) も足す」という筋はそのまま変わらない。