物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第1章 電子と光
左向きの電場の中で,電子(電気量 \(-e\),質量 \(m\))は右向きの力 \(eE\) を受け,極板 \(\mathrm{A}\) の点 \(\mathrm{O}\) から極板 \(\mathrm{B}\) へ進む。電子には下向きの重力 \(mg\) もはたらく。下へ引かれるぶん,\(\mathrm{B}\) に着くのは遅れるだろうか。
重力が変えるのは,着く位置だけ(下へずれる)。着く時刻は変わらない。
なぜ重力で遅れないのか。力を水平と鉛直に分けて考える。
水平の動き(解説①),鉛直の動き(解説②)の順に見る。2 つの向きは別々に考えてよく,同じ時間を共有する。
電子は負の電荷なので,電場(左向き)と逆の右向きに,大きさ \(eE\) の力を受ける。重力 \(mg\) は鉛直なので,水平の動きには関係しない。
\(ma = eE \qquad a = \dfrac{eE}{m}\)
加速度は一定。図の赤い目盛り(同じ時間ごとの位置)は,間隔が開いていく。
\(L = \dfrac{1}{2}at^2 = \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{eE}{m}\,t^2\)
この式に重力加速度 \(g\) は入らない。だから 着くまでの時間は重力によらない。
鉛直にはたらく力は重力 \(mg\) だけ(電場の力は水平)。はじめは静止しているので,鉛直には自由落下と同じように落ちる。
重力がない電子(図の薄い丸)とくらべると,同じ時刻にはいつも同じ横の位置にいる。ずれるのは縦の位置だけ。
同じ時刻に \(\mathrm{B}\) に着き,着く点が \(\mathrm{P}\) から \(\mathrm{Q}\) へ下がる。下がる距離には,水平と同じ時間 \(t\) を使う。
\(\mathrm{PQ} = \dfrac{1}{2}gt^2\)
\(t^2 = \dfrac{2mL}{eE} \qquad t = \sqrt{\dfrac{2mL}{eE}}\)
\(\mathrm{PQ} = \dfrac{1}{2}g \times \dfrac{2mL}{eE} = \dfrac{mgL}{eE}\)
水平で決まった時間を,鉛直の式に入れるだけで,ずれ \(\mathrm{PQ}\) が出る。
「重力で下へ引かれるぶん,着くのが遅れる」は誤り。重力は鉛直なので,水平の加速度 \(\dfrac{eE}{m}\) を変えない。時間は重力がないときと同じ。
直交する水平と鉛直の運動は,それぞれの向きの力だけで考えてよい。水平は \(eE\),鉛直は \(mg\)。
2 つの向きは同じ時間を使う。片方の向きで時間を出し,もう片方の式に入れる。
図では重力の効果を大きく描いている。ほんとうの値を入れると(\(m = 9.1\times10^{-31}\) kg,\(e = 1.6\times10^{-19}\) C,\(L = 1.0\) m,\(E = 1.0\) V/m,\(g = 9.8\) m/s²),
\(\mathrm{PQ} = \dfrac{mgL}{eE} \fallingdotseq 5.6\times10^{-11}\ \mathrm{m}\)
\(L\) のわずか \(5.6\times10^{-11}\) 倍。電子の運動では,ふつう重力を無視してよい。
水平 \(x = \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{eE}{m}\,t^2\) と鉛直 \(y = -\dfrac{1}{2}gt^2\) は,どちらも \(t^2\) に比例する。2 つをわると \(t^2\) が消えて,
\(y = -\dfrac{mg}{eE}\,x\)
静止から一定の力(\(eE\) と \(mg\) の合力)を受けるので,電子は合力の向きにまっすぐ進む。