物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第1章 電子と光
質量 \(m\) のボールが,速さ \(v\) で壁に垂直に当たり,同じ速さ \(v\) ではね返る。運動量の大きさは,当たる前も,はね返ったあとも \(mv\) で同じ。では,運動量の変化は 0 だろうか。
運動量は向きをもつ量。向きが逆になれば,大きさが同じでも変化は 0 にならない。変化の大きさは \(2mv\),運動量の 2 倍。
なぜ 2 倍になるのか。運動量を向きつきで書くところから見る。
運動量の変化(解説①),ボールと壁が受ける力積(解説②),光子でも同じ(解説③)の順に見る。
壁に向かう向き(右向き)を正とする。当たる前の運動量は \(+mv\),はね返ったあとは向きが逆なので \(-mv\)。
\((-mv) - (+mv) = -2mv\)
図の下の段では,前の矢印の先から,後の矢印の先へ引いた矢印が変化。長さは運動量の 2 倍で,左向き。
運動量の大きさは変わらないのに,変化は \(2mv\)。向きが逆になったぶん,変化は運動量の 2 倍になる。
力積は運動量の変化に等しい。ボールは壁から,左向きに大きさ \(2mv\) の力積を受ける。
ボールが壁から受ける力と,壁がボールから受ける力は,同じ大きさ・逆向きで,はたらく時間も同じ。だから壁は右向きに,同じ大きさ \(2mv\) の力積を受ける。
「速さが同じだから,運動量の変化は 0」は,運動量を大きさだけで見たまちがい。運動量は向きをもつ量で,変化は後 − 前を向きつきで引く。
波長 \(\lambda\) の光子は,大きさ \(\dfrac{h}{\lambda}\) の運動量をもつ粒としてふるまう(\(h\) はプランク定数)。
鏡は固定なので,はね返っても光子の波長(運動量の大きさ)は同じ。ボールと同じ形で,
\(\left(-\dfrac{h}{\lambda}\right) - \left(+\dfrac{h}{\lambda}\right) = -\dfrac{2h}{\lambda}\)
鏡は作用反作用で,右向きに \(\dfrac{2h}{\lambda}\) の力積を受ける。
黒い板のように光を吸収すると,光子は消えて,あとの運動量は 0。
\(0 - \dfrac{h}{\lambda} = -\dfrac{h}{\lambda}\)
板が受ける力積は \(\dfrac{h}{\lambda}\)。はね返るほうが,吸収するより 2 倍強く押す。
変化は後 − 前を向きつきで引く。相手が受ける力積は,作用反作用で同じ大きさ・逆向き。
向きが逆になるので,変化は運動量の 2 倍(ボール \(2mv\)・光子 \(\dfrac{2h}{\lambda}\))。止まる・吸収するなら 1 倍。
はね返ったあとの速さが \(e v\)(\(e\) は反発係数。\(0 \leqq e \leqq 1\))なら,あとの運動量は \(-e\,mv\)。
\((-e\,mv) - (+mv) = -(1 + e)mv\)
同じ速さではね返る(\(e = 1\))と \(2mv\),くっついて止まる(\(e = 0\))と \(mv\)。はね返りが強いほど,壁は強く押される。光子のはね返り(鏡)と吸収(黒い板)は,\(e = 1\) と \(e = 0\) にあたる。
光子 1 個が鏡に与える力積は小さいが,1 秒に \(n\) 個当たれば,1 秒間の力積の合計 \(n \times \dfrac{2h}{\lambda}\) が,鏡が受ける力になる。
毎秒のエネルギーが \(E\) なら \(n = \dfrac{E\lambda}{hc}\) で,
\(F = \dfrac{E\lambda}{hc} \times \dfrac{2h}{\lambda} = \dfrac{2E}{c}\)
この力を鏡の面積でわったものが光の圧力。吸収する板なら,力も圧力も半分になる。