物理 > 動く解説 > 物理 第5編 原子|第2章 原子と原子核
陽電子(電子と同じ質量で,電気がプラスの粒子)と電子が出会うと,2 つとも消えて \(\gamma\) 線が出る。ふつうは \(\gamma\) 線が 2 本出る。
2 本の \(\gamma\) 線は,好きな向きにばらばらに出るのだろうか。それとも,ちょうど反対の向きに出るのだろうか。
2 本はちょうど反対の向きに出て,エネルギーも同じ。\(m\) は電子(陽電子)の質量,\(c\) は光の速さ。2 本がそろう向き(上下か,左右か…)はどの向きでもよいが,2 本はいつも真反対になる。
なぜ真反対で,なぜ同じエネルギーなのか。運動量の保存から順に見る。
運動量の和(解説①),矢印をつなぐ(解説②),運動量とエネルギー(解説③),0.51 MeV のわけ(解説④)の順に見る。
電子と陽電子はとてもゆっくり(運動エネルギーは無視できる)なので,消える前の運動量の和は 0 とみなせる。
\(\gamma\) 線は波長のとても短い電磁波で,光子 1 個は運動量をもつ。向きは \(\gamma\) 線の進む向き。
消える前と後で運動量の和は変わらないので,2 本の \(\gamma\) 線の運動量の和も 0。
2 本の運動量の矢印を,1 本目の先に 2 本目の根元をつなぐ。和が 0 なら,2 本目の先ははじめの点に戻る。
向きが少しでもずれたり,長さがちがったりすると,はじめの点には戻らない。だから 2 本はちょうど反対の向きで,同じ大きさ。
▶ 再生で,矢印をつないだり戻したりする。
\(p = \dfrac{h}{\lambda}\)
\(h\) はプランク定数,\(\lambda\) は波長。
波の基本式 \(c = \nu\lambda\) より \(\lambda = \dfrac{c}{\nu}\)。代入すると,
\(p = \dfrac{h\nu}{c}\)
光子のエネルギーは \(E = h\nu\) なので,
\(p = \dfrac{E}{c}\)
運動量はエネルギーに比例する。2 本の運動量の大きさが同じなので,エネルギーも同じ。
質量 \(m\) に相当するエネルギーは \(E = mc^2\)。消えたのは電子と陽電子で,質量は \(2m\)。
\(2mc^2 = 1.02\ \text{MeV}\)
2 本のエネルギーは同じなので,1 本は半分。
\(mc^2 = 0.51\ \text{MeV}\)
電子 1 個の質量のエネルギーと同じ。何本に分かれても,和は 1.02 MeV のまま。
「\(\gamma\) 線は好きな向きにばらばらに出る」と考える。運動量の和が 0 のままなので,2 本なら必ず真反対に同じ大きさ。
止まった電子と陽電子が消えても,運動量の和は 0。2 本の \(\gamma\) 線の矢印をつなぐと,はじめの点に戻る=真反対・同じ大きさ。
\(p = \dfrac{E}{c}\) なので,運動量が同じならエネルギーも同じ。\(2mc^2 = 1.02\) MeV を半分ずつで,1 本 \(mc^2 = 0.51\) MeV。
まれに \(\gamma\) 線が 3 本出る。\(\gamma_1\) が \(x\) 軸の負の向き,\(\gamma_2\) が \(y\) 軸の負の向き,\(\gamma_3\) が \(x\) 軸と 45° の向きに出たとき,運動量の大きさを \(p_1\),\(p_2\),\(p_3\) とする。
\(x\):\(0 = p_3\cos45^\circ - p_1\)
\(y\):\(0 = p_3\sin45^\circ - p_2\)
\(p_1 = p_2 = \dfrac{p_3}{\sqrt{2}}\)
3 本の矢印をつなぐと,閉じた直角二等辺三角形になる。エネルギーも運動量に比例するので,\(E_1 : E_2 : E_3 = 1 : 1 : \sqrt{2}\)。
和は 2 本のときと同じ 1.02 MeV。\(E_2 = E_1\),\(E_3 = \sqrt{2}\,E_1\) なので,
\(E_1 + E_1 + \sqrt{2}\,E_1 = 1.02\ \text{MeV}\)
\(E_1 = \dfrac{1.02}{2 + \sqrt{2}} \fallingdotseq 0.30\ \text{MeV}\)
\(E_3\) は約 0.42 MeV。3 等分(0.34 MeV ずつ)ではない。
\(\gamma\) 線が 1 本だけだと,その運動量 \(p = \dfrac{E}{c}\) は 0 ではないので,運動量の和が 0 にならない。止まった電子と陽電子が消えるとき,\(\gamma\) 線は2 本以上出る。
消える前の運動量の和が 0 なら,出てくる \(\gamma\) 線の運動量の矢印をつなぐと,はじめの点に戻る。2 本なら真反対・同じ大きさ,3 本なら閉じた三角形。