物理 > 動く解説 > 物理 第2編 熱と気体|第1章 気体のエネルギーと状態変化
断熱材でできたシリンダーを,なめらかに動く仕切りで A 室と B 室に分ける。ヒーターで A 室だけを温めると,仕切りが右へ動き,熱の入らない B 室の気体も温度が上がる。では,ヒーターの熱 \(Q\) は,どこへ行ったのだろうか。
仕切りを押す仕事 \(W\) は,A 室では「した仕事」,B 室では「された仕事」として入り,全体で見ると消える。だから,ヒーターの熱 \(Q\) は 2 室の内部エネルギーの増加の和になる。
なぜ \(W\) が消えるのか。室ごとに第 1 法則を書いてから,足してみる。
A 室(解説①),B 室(解説②),2 室を足す(解説③)の順に見る。\(W\) は,A 室の気体が仕切りを押して B 室の気体にした仕事とする。
ヒーターから熱 \(Q\) を受け取る(\(Q_\mathrm{in} = Q\))。仕切りを押して B 室に仕事 \(W\) をするので,された仕事は \(W_\mathrm{in} = -W\)。
\(\Delta U_\mathrm{A} = Q - W\)
断熱材と仕切りにかこまれて,熱は入らない(\(Q_\mathrm{in} = 0\))。A 室から仕事 \(W\) をされる(\(W_\mathrm{in} = W\))。
\(\Delta U_\mathrm{B} = W\)
B 室は,仕事をされたぶん内部エネルギーが増え,温度が上がる(断熱圧縮)。断熱材が止めるのは熱だけで,エネルギーは仕事として仕切りを通って運ばれる。
\(\Delta U_\mathrm{A} + \Delta U_\mathrm{B} = Q - W + W\)
\(-W\) と \(+W\) が打ち消し合う。
仕切りを押す仕事は,シリンダーの中で A 室から B 室へエネルギーを渡しているだけ。シリンダー全体の外へは仕事をしない。
\(Q = \Delta U_\mathrm{A} + \Delta U_\mathrm{B}\)
2 室の気体をまとめて 1 つの系とみる。外から受け取る熱は \(Q\)。シリンダーの両端は動かないので,外からされる仕事は 0。
\(\Delta U_\mathrm{A} + \Delta U_\mathrm{B} = Q + 0\)
解説③と同じ式になる。仕切りの仕事は系の中のやりとりなので,全体の式には出てこない。
「ヒーターは A 室だけを温めるので \(Q = \Delta U_\mathrm{A}\)」とすると,仕切りを押した仕事 \(W\) のぶんを落とす。A 室の式は \(\Delta U_\mathrm{A} = Q - W\)。「熱が入らない B 室は温度が変わらない」も誤り(仕事をされて温度が上がる)。
A 室は \(-W\),B 室は \(+W\)。全体で見ると打ち消し合って消える。
全部 2 室の内部エネルギーの増加になる:\(Q = \Delta U_\mathrm{A} + \Delta U_\mathrm{B}\)。
どちらの室も単原子分子理想気体 1 mol なら,\(\Delta U = \dfrac{3}{2}R\Delta T\)。はじめの温度を \(T_0\),あとの温度を \(T_1\)(A 室),\(T_2\)(B 室)とすると,
\(Q = \dfrac{3}{2}R(T_1 - T_0) + \dfrac{3}{2}R(T_2 - T_0)\)
仕切りの仕事 \(W\) を求めなくても,2 室の温度の変化から \(Q\) が決まる。
\(W\) は,B 室の気体が押し縮められた仕事で,B 室の \(p\)–\(V\) 図で道すじの下の面積になる。B 室は熱の出入りがないので,道すじは断熱線(等温線より急)。
面積を計算しなくても,B 室の第 1 法則から \(W = \Delta U_\mathrm{B} = \dfrac{3}{2}R(T_2 - T_0)\) と求まる。