物理 > 動く解説 > 物理基礎 第1編 運動とエネルギー|第2章 運動の法則

斜めの力,横は sin? cos?

❓ 1. 疑問と結論

床の上の箱を,ひもで斜め上に力 \(F\) で引く。この力を横と縦の 2 つに分けると,横の力は \(F\sin\theta\)? それとも \(F\cos\theta\)?

🎯 結論:θ をはさむほうが cos

角 \(\theta\) をはさむほうの力が \(F\cos\theta\),向かい側の力が \(F\sin\theta\)。横か縦かではなく,\(\theta\) の位置で決まる。
💡
力の分解……1 つの力を,同じはたらきをする 2 つの力(分力)に分けること。ふつうは,たがいに垂直な 2 つの向きに分ける

なぜそうなるのか。直角三角形の三角比から順に見る。

📚 2. 解説と確かめ

三角比の定義(解説①),力に当てはめる(解説②),角を縦から測る(解説③)の順に見る。最後に,角の端の値で確かめる。

📐 解説①:三角比の定義から

直角三角形の斜辺を \(a\),角 \(\theta\) をはさむ辺を \(b\),向かいの辺を \(c\) とする。

  1. cos = はさむ辺 ÷ 斜辺

    \(\cos\theta = \dfrac{b}{a}\)

    両辺に \(a\) をかけると,

    \(b = a\cos\theta\)

  2. sin = 向かいの辺 ÷ 斜辺

    \(\sin\theta = \dfrac{c}{a}\)

    両辺に \(a\) をかけると,

    \(c = a\sin\theta\)

💬 補足

斜辺に \(\cos\theta\) をかけるとはさむ辺,\(\sin\theta\) をかけると向かいの辺になる。

🧱 解説②:力を斜辺にする

力 \(F\) を斜辺とする長方形を作る。横と縦の 2 つの力は,長方形の 2 辺になる。

  1. 長方形を作る

    \(F\) の矢印の先から,横と縦に点線を引く。

  2. 横は θ をはさむ辺

    斜辺 × \(\cos\theta\) なので,横の力は \(F\cos\theta\)。

  3. 縦は向かいの辺

    斜辺 × \(\sin\theta\) なので,縦の力は \(F\sin\theta\)。

🔄 解説③:θ を縦から測ると

問題によっては,角 \(\theta\) を縦(鉛直)から測って与える。

  1. はさむのは縦の力

    \(\theta\) をはさむのは縦の力なので,縦が \(F\cos\theta\)。

  2. 横は向かい側

    横は向かい側になるので \(F\sin\theta\)。入れ替わる。

⚠️ 要注意!

「横だから \(\cos\)」と覚えると,\(\theta\) を縦から測った問題で逆にする。先に \(\theta\) の位置を見る。

🧮 確かめ:θ を端まで動かすと

床から測った \(\theta\) を,0 と 90° に近づけて確かめる。

  1. θ = 0(真横に引く)

    横 = \(F\cos 0 = F\),縦 = \(F\sin 0 = 0\)。力はぜんぶ横。

  2. θ = 90°(真上に引く)

    横 = \(F\cos 90° = 0\),縦 = \(F\sin 90° = F\)。力はぜんぶ縦。

どちらも見たとおり。端の値で確かめると,sin と cos の取り違えに気づける。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

ショートでは扱わなかった先の話。よく使う角の値と,斜めに引くと床を押す力が減ることを見る。

📋 よく使う角の値

\(\theta\)\(\cos\theta\)\(\sin\theta\)
30°\(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\)\(\dfrac{1}{2}\)
45°\(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\)\(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\)
60°\(\dfrac{1}{2}\)\(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\)

30° と 60° は,\(\sin\) と \(\cos\) が入れ替わる。\(\theta\) を縦から測ると成分が入れ替わるのと同じ理由(\(\sin\theta = \cos(90° - \theta)\))。

📏 斜めに引くと,床を押す力が減る

質量 \(m\)〔kg〕の箱を,床から \(\theta\) の向きに力 \(F\)〔N〕で引く。箱は床から離れず,縦の向きの力はつりあっている。

  1. 縦の力を並べる

    上向き:床からの垂直抗力 \(N\)〔N〕と \(F\sin\theta\)。下向き:重力 \(mg\)。

  2. 縦のつりあい

    \(N + F\sin\theta = mg\)

    移項すると,

    \(N = mg - F\sin\theta\)

  3. 横へ進める力

    箱を横へ進めるのは \(F\cos\theta\)。斜めに引くと,横の力は減るが,床を押す力も減る。

💡 もう一歩:あらい床なら,摩擦も減る

動摩擦力は \(\mu' N\)(\(\mu'\) は動摩擦係数)。\(N = mg - F\sin\theta\) なので,斜めに引くと摩擦力も小さくなる。重い荷物を少し上向きに引くと楽になるのは,このため。