物理 > 動く解説 > 物理 第4編 電気と磁気|第1章 電場

名古屋大:誘電体と電気容量

❓ 1. 疑問と結論

面積 \(S\),間隔 \(d\) の 2 枚の極板を電圧 \(V\) の電源につなぐ。そのあいだに,厚さが間隔の半分 \(\dfrac{d}{2}\)・比誘電率 4 の誘電体を, 極板と平行に,重なる所が極板の半分ほどになるまで差しこむ。このコンデンサーの電気容量はいくつだろうか。

🎯 結論:たてとよこに 2 回切る

\(C = C_1 + C_0\)
\(\dfrac{1}{C_1} = \dfrac{1}{C_a} + \dfrac{1}{C_b}\)

\(C_1\) は誘電体と重なる所の容量,\(C_0\) は重ならない所(あいだが真空)の容量。\(C_a\) は誘電体の層,\(C_b\) は真空の層の容量。 切り分けてしまえば,どの部分も基本の形 \(C=\varepsilon\dfrac{S}{d}\) だけで出せる。

💡
どちらで切るかは「何が同じか」で決まる……同じ 2 枚の極板につながっている(=同じ電圧がかかる)部分どうしは並列, 極板のあいだで上下に重なっている(=同じ電気量がたまる)層どうしは直列。この 2 つを取りちがえると,足し算と逆数の足し算が入れかわる。

なぜその切り分けでよいのか,順に見ていく。

📚 2. 解説

① たてに切って面積を分ける(並列)→ ② 重なる所をよこに切って厚さを分ける(直列)→ ③ まとめて足す,の順に見る。

① たてに切る —— 同じ電圧だから並列

  1. 真上から見て 2 つに分ける

    誘電体と重なる所(面積 \(S_1\))と,重ならない所(面積 \(S-S_1\)。あいだは真空のまま)に分かれる。

  2. どちらにも同じ電圧がかかる

    2 つの部分は同じ 2 枚の極板につながっている。極板は導体なので,どちらの部分の極板間にも,電源の電圧 \(V\) がそのままかかる。

  3. 同じ電圧 = 並列 = 容量は足し算

    たまる電気量は \(Q=C_1V+C_0V=(C_1+C_0)V\)。全体を 1 つのコンデンサーと見たときの容量は,

    \(C = C_1 + C_0\)

② 重なる所をよこに切る —— 同じ電気量だから直列

  1. 断面を見る

    重なる所をよこに切ると,厚さ \(\dfrac{d}{2}\) の誘電体の層と,厚さ \(\dfrac{d}{2}\) の真空の層が上下に重なっている。

  2. 同じ電気量 = 直列

    切れ目に導線でつないだ 2 枚の極板をはさんだと考えると,この 2 枚はほかとつながっていないので電気量の合計は 0 のまま。だから,極板にたまった電気量 \(Q\) を,どちらの層も同じだけ受け持つ (コンデンサーを 2 つ直列につないだときと同じ)。電圧のほうが \(V_a+V_b=V\) と分かれる。

  3. 層ごとに基本の形で出す

    \(C_a = \dfrac{4\varepsilon_0 S_1}{d/2} = \dfrac{8\varepsilon_0 S_1}{d}\),\(\quad C_b = \dfrac{\varepsilon_0 S_1}{d/2} = \dfrac{2\varepsilon_0 S_1}{d}\)

    直列なので逆数を足して,

    \(\dfrac{1}{C_1} = \dfrac{d}{8\varepsilon_0 S_1} + \dfrac{d}{2\varepsilon_0 S_1} = \dfrac{5d}{8\varepsilon_0 S_1}\) → \(C_1 = \dfrac{8\varepsilon_0 S_1}{5d}\)

③ 足して全体の容量にする

重ならない所は真空だけなので \(C_0 = \dfrac{\varepsilon_0 (S-S_1)}{d}\)。①の並列の式に入れて,

\(C = \dfrac{8\varepsilon_0 S_1}{5d} + \dfrac{\varepsilon_0 (S - S_1)}{d}\)

誘電体が入っている所だけ,単位面積あたりの容量が \(\dfrac{8}{5}\) 倍になっている,と読める。 誘電体を全部抜けば \(S_1=0\) で \(C=\varepsilon_0\dfrac{S}{d}\),全面を覆えば \(S_1=S\) で \(C=\dfrac{8\varepsilon_0 S}{5d}\)。

⚠️ つまずき

「比誘電率が 4 だから容量も 4 倍」は間違い。誘電体は面積の一部にしか無く,しかも厚さも一部(残りは真空)。 4 倍になるのは,誘電体が極板のあいだを全部うめたときだけ。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

📏 誘電体の高さは効かない

誘電体を極板のあいだのどの高さに置いても,真空の層の合計の厚さが \(\dfrac{d}{2}\) のままなら \(C_1\) は変わらない。 真空の層が上下 2 枚に分かれても,直列の逆数の足し算では

\(\dfrac{d/4}{\varepsilon_0 S_1} + \dfrac{d/4}{\varepsilon_0 S_1} = \dfrac{d/2}{\varepsilon_0 S_1}\)

と,合計の厚さだけが効くから。右の図のスライダー「誘電体の高さ」を動かしても,上の \(C_1\) の値が動かないことで確かめられる。

一般に,厚さ \(t\)・比誘電率 \(\varepsilon_r\) の板を入れたときは

\(\dfrac{1}{C_1} = \dfrac{t}{\varepsilon_r\varepsilon_0 S_1} + \dfrac{d-t}{\varepsilon_0 S_1}\)

\(\varepsilon_r=4,\ t=\dfrac{d}{2}\) ならこれが \(\dfrac{5d}{8\varepsilon_0 S_1}\) になる。

💬 確かめ方

作った式が正しいかは,極端な場合で確かめるのが速い。\(\varepsilon_r=1\)(ただの真空の板)なら \(C_1=\dfrac{\varepsilon_0 S_1}{d}\), \(t\to d\)(あいだを全部うめる)なら \(C_1\to\dfrac{4\varepsilon_0 S_1}{d}\)——どちらも式に入れると出てくる。

⚡ 差しこむ深さを変えると,容量はどう動くか

誘電体を押しこむほど重なる面積 \(S_1\) が増え,その部分の単位面積あたりの容量が \(\dfrac{8}{5}\) 倍なので,全体の容量 \(C\) は大きくなる。 上の①の図のスライダー「誘電体の位置」を動かすと,\(C_1\) の棒がのび,\(C_0\) の棒がちぢみ,合計が変わっていくのが見える。 電源につないだままなら電圧 \(V\) は変わらないので,電気量 \(Q=CV\) と静電エネルギー \(U=\dfrac{1}{2}CV^2\) も,\(C\) と同じように変わる。

🧭 どこで使えるか