物理 > 動く解説 > 物理 第4編 電気と磁気|第1章 電場
電池につないだコンデンサーに,電気を通さない板(誘電体)をゆっくり差しこむ。電圧 \(V\) は一定のまま,電気容量 \(C\) が増えて,電池から電荷が送りこまれる。 電池が出したエネルギーは,ぜんぶコンデンサーにたまるのだろうか。
\(W_I\) は電源がする仕事(電荷を高さ \(V\) だけ持ち上げて送り出す仕事),\(\Delta U\) は静電エネルギー(コンデンサーがたくわえるエネルギー)の変化,\(\Delta C\) は電気容量の変化。 電源がした仕事のうち,静電エネルギーになるのは半分だけ。残りの半分の行き先は,手を離せば板の運動エネルギー,ゆっくり動かせば手(外力の仕事と打ち消しあう), 電荷のないコンデンサーを充電するときはジュール熱。
入試では引き出す向きで問われることが多い。下の解説は引き出す向きで見ていく(符号がぜんぶ逆になる。差しこむ向きとの関係は「もっと詳しく」)。
なぜ 2 倍になるのか,そして力がどう決まるのかを順に見ていく。
① 電圧が一定だと電荷が出入りする → ② 電源がする仕事 → ③ 静電エネルギーの変化はその半分 → ④ 収支から外力の仕事 → ⑤ 力はグラフの傾き,の順に見る。
極板にたまる電気量は,電気容量と電圧で決まる。
\(Q = CV\)
\(V\) が一定のまま容量が \(\Delta C\) 変わると,
\(\Delta Q = V\Delta C\)
誘電体を引き出すと容量は減るので \(\Delta C \lt 0\),つまり電荷は減る。
電池を外していれば電荷は逃げ場がないが,つないだままなら,減ったぶんの電荷は導線を通って電源へもどる。 逆に容量が増える向きに動かせば,電源から電荷が出ていく。
電位差 \(V\) のあいだを電気量 \(\Delta Q\) が通るとき,電源がする仕事は \(\Delta Q\) と \(V\) の積。
\(W_I = \Delta Q\cdot V\)
\(W_I = V\Delta C\cdot V = V^2\Delta C\)
引き出す向きでは \(\Delta C \lt 0\) なので \(W_I \lt 0\)。 これは「電源がエネルギーを受け取る(充電される)」ことを表している。
この式に出てくるのは \(V\) と \(\Delta C\) だけ。 誘電体を動かすのでも,極板の間隔を変えるのでも,容量が同じだけ変われば電源がする仕事は同じ。
静電エネルギーは,電気容量と電圧で次のように書ける。
\(U = \dfrac{1}{2}CV^2\)
\(V\) が一定なので,変わるのは \(C\) だけ。したがって
電源がした仕事のちょうど半分しか,静電エネルギーにならない(引き出す向きなら,電源へもどるエネルギーの半分だけが静電エネルギーの減りぶん)。 \(U = \dfrac{Q^2}{2C}\) や \(U = \dfrac{1}{2}QV\) の形から出してもよいが,\(V\) が一定のときは \(U = \dfrac{1}{2}CV^2\) がいちばん短い。
誘電体に仕事をするのは外力と静電気力,コンデンサーにエネルギーを入れるのは電源。 ゆっくり動かせば運動エネルギーは残らず,熱も出ないので,
\(W_I + W_F = \Delta U\)
\(W_F = \Delta U - W_I = \Delta U - 2\Delta U = -\Delta U\)
引き出す向きでは \(\Delta U \lt 0\) なので \(W_F \gt 0\)。 外力が正の仕事をする=引っぱらないと誘電体は出ていかない。 誘電体は引きこまれる向きに力を受けている。
距離 \(\Delta\) だけ動かしたときの外力の仕事は \(W_F = F_{\text{外}}\Delta\)。 ゆっくり動かすので外力と静電気力はつりあっていて \(F_{\text{外}} = -F_\mathrm{p}\)。
\(W_F = -\Delta U\) だったので \(-F_\mathrm{p}\Delta = -\Delta U\),つまり
\(F_\mathrm{p} = \dfrac{\Delta U}{\Delta}\)
静電気力は,\(U\) と位置のグラフの傾きになっている。
引き出すほど \(U\) は小さくなる(グラフは右下がり)ので傾きは負。 したがって \(F_\mathrm{p} \lt 0\)=引きこむ向き。
「電源がした仕事がそのまま静電エネルギーになる」は勘違い。なるのは半分だけ。 残りの半分は,誘電体(や極板)を動かす力学的な仕事として出入りする。 電池を外してから動かした場合は電源の仕事が 0 になるので,収支も答えも変わる(下の「もっと詳しく」)。
電源は電位差 \(V\) のまま電荷 \(\Delta Q = V\Delta C\) を運ぶので \(W_I = V^2\Delta C\)。 静電エネルギーは \(U = \dfrac{1}{2}CV^2\) なので変化は \(\dfrac{1}{2}V^2\Delta C\)=半分。
\(F_\mathrm{p} = \dfrac{\Delta U}{\Delta}\)。静電エネルギーを位置の関数にして,その傾きを読むだけ。
誘電体を差しこむ向きに動かすと容量は増える(\(\Delta C \gt 0\))ので,
\(W_I = V^2\Delta C \gt 0\),\(\quad \Delta U = \dfrac{1}{2}V^2\Delta C \gt 0\),\(\quad W_F = -\Delta U \lt 0\)
電源は \(2\Delta U\) を送り出し,そのうち \(\Delta U\) がコンデンサーにたまり,残りの \(\Delta U\) は 誘電体を引きこむ力学的な仕事として外へ出ていく(押さえていないと,誘電体は勢いよく吸いこまれる)。 「電源が 2 倍働き,半分が静電エネルギー,半分が力学的な仕事」という形は,どちらの向きでも同じ。
電池を外すと電気量 \(Q\) が一定になり,静電エネルギーは \(U = \dfrac{Q^2}{2C}\) で考える。電源の仕事は 0 なので収支は \(W_F = \Delta U\)。 \(C\) が減れば \(U\) は増えるので,こちらも引き出すには正の仕事が必要になる。
同じ瞬間・同じ配置なら,誘電体にはたらく力は電池をつないでいても外していても同じ (力は,そのときの電荷と電場だけで決まる)。じつは \(F_\mathrm{p} = \dfrac{1}{2}V^2\dfrac{\Delta C}{\Delta}\) と書けて, 電圧一定なら \(F_\mathrm{p} = +\dfrac{\Delta U}{\Delta}\),電気量一定なら \(F_\mathrm{p} = -\dfrac{\Delta U}{\Delta}\)。 符号がちがうのは \(U\) の変わり方がちがうからで,力そのものは一致する。どちらの式を使うかは「何を一定に保っているか」で決める。
電源の仕事は \(W = QV\),たまるのは \(U = \dfrac{1}{2}QV\)=やはり半分。手も板もないので,残りの半分は導線の抵抗で出るジュール熱になる。 抵抗がどんなに小さくても,熱になるのは \(\dfrac{1}{2}QV\) で変わらない(抵抗が小さいと,大きな電流が短い時間だけ流れる)。
誘電体を入れる・抜く,極板の間隔を変える,極板を横にずらす——どれも「容量がどれだけ変わるか(\(\Delta C\))」を出せば, 電源の仕事・静電エネルギーの変化・外力の仕事が一気に書ける。検算にも使える(\(W_I\) が \(\Delta U\) の 2 倍になっているか)。
力のつりあいを立てなくても,\(U\) を位置 \(x\) の関数にして傾きを読めばよい。 極板の間隔 \(d\) を変える問題なら \(U(d)\) の傾き,誘電体を動かす問題なら \(U(x)\) の傾き。 変化が小さいところでは「\(\Delta U\) を \(\Delta\) でわる」だけで求まる。