物理 > 動く解説 > 物理 第4編 電気と磁気|第3章 電流と磁場

京都大:磁場の中の枠

❓ 1. 疑問と結論

鉛直な軸のまわりに回れる正方形の枠がある。質量 \(M\) は軸から遠い一辺にだけあり,この辺には下向きに電流 \(I_L\) が流れる。 磁場 \(B\) は一様で,水平な向き。この枠を,うえから見て少し回して放すと,どう動くだろうか。

🎯 結論:ばねのように往復する(単振動)

\[ F_{\text{⊥}} = -I_LB\,Y \qquad T = 2\pi\sqrt{\dfrac{M}{I_LB}} \]

ずれ \(Y\) に比例してまん中へ戻す力なので,ばね定数 \(I_LB\) のばねと同じ単振動になる。

📚 2. 解説

① 力の向きと大きさ → ② 回す働きをする成分 → ③ ばねとくらべて周期を出す → ④ 往復の形,の順に見る。

① 力はいつも右向き・同じ大きさ

  1. 電流の流れる一辺は,磁場から力を受ける

    長さ \(\ell\) の導線に電流 \(I_L\) が流れると,磁場 \(B\) から大きさ \(I_LB\ell\) の力を受ける。向きはフレミングの左手の法則で,横から見て右向き。

  2. ほかの 3 辺は回さない

    上の辺・下の辺の力は鉛直(鉛直な軸のまわりに回さない),軸の上の辺の力は軸を通る。回す働きをするのは,軸から遠い一辺の力だけ。

  3. 回しても変わらない

    磁場は一様で,電流の向き(下向き)も変わらないので,枠を回しても力はいつも同じ向き・同じ大きさ。

② 回すのは,棒に垂直な成分

③ ばねとくらべる

  1. ばねの力と同じ形

    ずれに比例して戻す力 \(-kY\) は,ばねの力の形。ここでは \(k = I_LB\)。

  2. 同じ動き

    なめらかな床の上で,ばね定数 \(I_LB\) のばねにつないだ質量 \(M\) の物体と同じ動きをする。磁場の力が,目に見えないばねの役をしている。

  3. 周期

    ばねの周期 \(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{M}{k}}\) の \(k\) に \(I_LB\) を入れて,\(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{M}{I_LB}}\)。電流や磁場を強くすると,ばねが固くなったのと同じで,速く往復する。

④ 往復の形

  1. 放した所から反対側へ

    ずれ \(Y_0\) で放すと,まん中を通って,反対側の \(-Y_0\) まで行き,また戻る。

  2. cos の形

    \(Y = Y_0\cos\dfrac{2\pi t}{T}\)。反対側に着くのは半周期 \(\dfrac{T}{2}\) のとき,1 周期 \(T\) でもとの所に戻る。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

🔋 ずらすのに要る仕事は,ばねの位置エネルギーと同じ形

まん中からずれ \(Y_0\) までずらすとき,戻す力 \(I_LB\,Y\) にさからって仕事をする。力はずれに比例するので,仕事は三角形の面積で \(\dfrac{1}{2}I_LB\,Y_0{}^2\)。 ばねの弾性エネルギー \(\dfrac{1}{2}kx^2\) と同じ形になる。

📐 「少し」回すのはなぜ?

戻す力 \(-I_LB\,Y\) は,どの角でもそのまま成り立つ。ただし棒の先は円の上を動くので,大きく回すと,ずれ \(Y\) の動きがばねとぴったり同じにはならない。 少し回すときは,棒の先はほぼ横の線の上を動くとみなせて,ばねと同じ単振動になる。

🕰 振り子とも同じ形

向きと大きさが変わらない力で,軸のまわりに戻される動きは,重力で戻される振り子と同じ形。振り子では重力 \(Mg\) が,ここでは磁場の力 \(I_LB\ell\) が,その役をしている。