物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第2章 剛体

京都大:回らない条件

❓ 1. 疑問と結論

軸のまわりに回れる棒の,軸から \(d\) の所を,力 \(F_1\) で棒に垂直に押す。このままでは棒は左回りに回り出す。 軸の反対側の,軸から \(\ell\) の所も押して,棒を回らないようにするには,どちら向きに,どれだけの力で押せばよいだろうか。

🎯 結論:力のモーメントをつり合わせる

\[ F_1 d = F_2 \ell \]

つり合わせるのは力の和ではなく,力のモーメント。右も同じ向きに押す。

📚 2. 解説

① 力のモーメントとは → ② 同じ向きの力でも打ち消せる → ③ うでが長いほど小さな力 → ④ 力の和を 0 にすると,の順に見る。

① 力のモーメント = 力 × うでの長さ

  1. 回すはたらきは,力と距離で決まる

    棒を回すはたらきは,力の大きさだけでなく,軸から力までの距離(うでの長さ)でも決まる。

  2. 力のモーメント

    力 × うでの長さを力のモーメントという。図では,うでを横・力を縦にした長方形の面積で表した。

  3. 回す向き

    左の点を下向きに押すと,棒は左回り(反時計回り)に回ろうとする。

② 軸の両側なら,同じ向きの力でも打ち消せる

  1. 右も同じ向きに押す

    右の点を同じ下向きに押すと,棒を右回りに回そうとする。軸の両側にある力は,同じ向きでも回す向きが逆になる。

  2. 面積が等しいと回らない

    左回りの \(F_1 d\) と右回りの \(F_2 \ell\) が等しい(2 つの長方形の面積が等しい)とき,棒は回らない。

  3. 力の和は軸が受け持つ

    2 つの力の和は下向きに \(F_1 + F_2\) で 0 ではない。それは軸が上向きに \(F_1 + F_2\) の力で支える。軸の力は軸の上にはたらくので,回すはたらきをもたない。

③ うでが長いほど,小さな力で足りる

\[ F_2 = \dfrac{d}{\ell}\,F_1 \]

右のうで \(\ell\) を長くすると,長方形は横に長く,背が低くなる。同じ面積なら,力 \(F_2\) は小さくて済む。スパナの持つ所が長いほど,小さな力でボルトを回せるのと同じである。

④ 力の和を 0 にすると,かえって回り出す

「動かないのだから力の和を 0 に」と考えて,右を上向きに同じ大きさ \(F_1\) で押すと,右の力も棒を左回りに回す。2 つの力のモーメントは打ち消し合わず,足し合わさって \(F_1(d+\ell)\) になり,棒は回り出す。

言い換えると,回らない条件は力の和が 0 であることではなく,左回りと右回りの力のモーメントが等しいことである。

🔍 3. もっと詳しく

力が棒に斜めのとき

力が棒に垂直でないときは,うでの長さは「軸から力の作用線までの距離」になる。棒にそった距離 \(x\) で,力が棒と角 \(\theta\) をなすなら,うでの長さは \(x\sin\theta\) で,力のモーメントは \(F x \sin\theta\)。

入試では

回れる台の上の 2 つの物体に,磁場から同じ向きの力がはたらく場面でも,考え方は同じ。台が回らない条件を,力の和ではなく軸のまわりの力のモーメントで立てる(京都大 2026 前期 第2問)。

🔑 4. まとめ