物理 > 動く解説 > 物理 第1編 力と運動|第3章 運動量の保存

跳ね返りの高さは e² 倍

❓ 1. 疑問と結論

ボールを床に落とすと,跳ね返った高さはもとより低い。では,もとの高さの何倍になる?

🎯 結論:高さは \(e^2\) 倍

$$ h' = e^2 h $$
\(h\)〔m〕:落とした高さ
\(h'\)〔m〕:跳ね返った高さ
\(e\):反発係数
💡
反発係数 \(e\)……動かない床にぶつかるとき,直後の速さ ÷ 直前の速さ(\(0 \leqq e \leqq 1\))
  • 🔢 数で見る

    \(e = 0.5\) なら \(e^2 = 0.25\)。10 m から落とすと 2.5 m。

  • 🔁 何回跳ねても同じ割合

    跳ねるたびに \(e^2\) 倍。10 → 2.5 → 0.63 → 0.16 m。

🔥 ここが超重要

反発係数が決めるのは高さではなく速さ。だから,いったん速さに直してから高さへ戻る(次のカード)。

📚 2. 解説と確かめ

なぜ 2 乗になるのかを式で見てから,いちばん多い思い違いで確かめる。

📐 解説:なぜ 2 乗になるのか

落ちる → ぶつかる → 上がる,の 3 段。速さを通って高さへ戻る。

⬇️ ① 衝突の前:ぶつかる直前の速さ

  1. 向きを決める

    空気抵抗は考えない。落ちる向きを正にとる。

  2. 公式に入れる

    \(v^2 - v_0{}^2 = 2ax\) に,\(v_0 = 0\),\(a = g\),\(x = h\)。

    \(v_y{}^2 - 0 = 2gh\)

  3. 直前の速さ(①式)

    \(v_y{}^2 = 2gh\) ……①

⬆️ ② 衝突の後:最高点の高さ

  1. 向きを取り直す

    上りなので上向きを正。加速度は \(-g\)。

  2. 公式に入れる

    はじめ \(v_y{}'\),最高点で 0,距離は \(h'\)。

    \(0 - v_y{}'^2 = 2(-g)h'\)

  3. 最高点の高さ(②式)

    両辺を \(-2g\) でわる。

    \(h' = \dfrac{v_y{}'^2}{2g}\) ……②

🔗 ③ 反発係数で結ぶ

  1. 直後の速さ

    \(v_y{}' = e\,v_y\)

  2. 2 乗して①を入れる

    ①も②も速さの 2 乗なので,形をそろえる。

    \(v_y{}'^2 = e^2 v_y{}^2 = e^2 \cdot 2gh\)

  3. ②に入れる

    分母と分子の \(2g\) が約分できる。

    \(h' = \dfrac{e^2 \cdot 2gh}{2g} = e^2 h\)

速さが \(e\) 倍になると,高さは \(e^2\) 倍になる。
🔁 別解:力学的エネルギー保存で見る

落ちるあいだも上がるあいだも,仕事をする力は重力だけ。

$$ \dfrac12 m v_y{}^2 = mgh, \qquad \dfrac12 m v_y{}'^2 = mgh' $$

比をとると,\(m\) と \(g\) が消える。

$$ \dfrac{h'}{h} = \left(\dfrac{v_y{}'}{v_y}\right)^2 = e^2 $$

速さが \(e\) 倍 → 運動エネルギーが \(e^2\) 倍 → それがそのまま位置エネルギーになる。

🧮 確かめ:反発係数 0.5 なら,高さは半分?

いちばん多い思い違い。答える前に,自分の答えを決めてから読む。

  1. 答えは「いいえ」

    半分になるのは速さのほう。

  2. 高さにかかるのは \(e^2\)

    \(h' = 0.5^2 \times h = 0.25\,h\)

  3. 数で見る

    10 m から落とすと 2.5 m。高さは 4 分の 1。

⚠️ 要注意!

「\(e = 0.5\) なら高さも半分」は誤り。反発係数は速さの比で,高さは速さの 2 乗で決まる。

🔑 まとめ

🔍 3. もっと詳しく

ショートでは流した所。知りたい所だけ開く。

🔁 何回も跳ねると?

跳ねるたびに \(e^2\) 倍。では,何回跳ねて,いつ止まる?

📉 \(n\) 回目の最高点

  1. 1 回目

    \(h_1 = e^2 h\)

  2. 2 回目

    \(h_2 = e^2 h_1 = \left(e^2\right)^2 h\)

  3. \(n\) 回目

    同じ割合で減る。公比 \(e^2\) の等比数列。

$$ h_n = \left(e^2\right)^{n} h $$
\(h_n\)〔m〕:\(n\) 回跳ねたあとの最高点
\(n\):跳ねた回数

ちょうど 0 にはならない。跳ねる回数は無限。

⏱️ それでも,止まるまでの時間は有限

  1. 1 回ぶんの滞空時間

    跳ね上がる速さは \(e^{n} v_y\)。上がって落ちるまでは,最高点までの 2 倍。

    \(t_n = \dfrac{2e^{n} v_y}{g}\)

  2. 全部たす

    最初の落下 \(\dfrac{v_y}{g}\) に,\(t_1, t_2, \cdots\) をたす。

    $$ T = \dfrac{v_y}{g} + \dfrac{2v_y}{g}\bigl(e + e^2 + \cdots\bigr) $$

  3. かっこの中は有限

    公比 \(e\)(\(0 \leqq e \lt 1\))の無限等比級数。

    \(e + e^2 + \cdots = \dfrac{e}{1 - e}\)

$$ T = \dfrac{v_y}{g} \cdot \dfrac{1 + e}{1 - e} $$
\(v_y = \sqrt{2gh}\):はじめにぶつかる速さ
\(e\):反発係数(\(0 \leqq e \lt 1\))

\(h = 10\ \text{m}\),\(e = 0.5\) なら \(T \fallingdotseq 4.3\ \text{s}\)。無限回跳ねても,4.3 秒で止まる。

🧮 計算例:級数の和の出し方と,動いた道のり

\(S = e + e^2 + \cdots\) に \(e\) を掛けると,項が 1 つずつずれる。引くと真ん中が全部消える。

$$ S - eS = e \quad\Longrightarrow\quad S = \dfrac{e}{1 - e} $$

動いた道のりを \(D\) とおく。跳ね返ったあとは,同じ高さを上りと下りで 2 回通る。

$$ D = h + 2\left(h_1 + h_2 + \cdots\right) $$

$$ {}= h\left(1 + \dfrac{2e^2}{1 - e^2}\right) \fallingdotseq 16.7\ \text{m} $$

\(e\)0.1(粘土)0.50.9(スーパーボール)
\(T\)1.7 s4.3 s27 s

\(e\) が 1 に近いほど,\(T\) は急に長くなる。

↗️ 斜めに当たると?

斜めに当たっても,跳ね返りの高さは \(e^2\) 倍?

  1. 速度を 2 つに分ける

    床に平行な成分と,床に垂直な成分。

  2. 平行な成分はそのまま

    なめらかな床は,平行な向きに力をおよぼさない。

  3. 垂直な成分だけ \(e\) 倍

    反発係数が効くのは床に垂直な成分だけ。

水平でなめらかな床なら,斜めに当たっても高さは \(e^2\) 倍。変わるのは跳ね返る向きだけ。
⚠️ 要注意!

「入射角 = 反射角」は \(e = 1\) のときだけ。\(e \lt 1\) なら,跳ね返った球は床に寝て飛ぶ。

💬 補足

床が動いているときは相対速度で考える(\(V\):床の速度)。

\(v' - V = -e\,(v - V)\)