真空に近いガラス管に高電圧をかけると,陰極から何かが飛び出す。その正体を突き止める。
見つける → 正体を決める → 量を測るの順に,30 年あまりかけて進んだ。
トムソンは,管の端の蛍光面に目盛りを付け,電場や磁場をかけたとき,光る点がどれだけずれるかを読んだ。
そして,比電荷が水素イオンの 1000 倍以上もあることから,原子よりずっと軽い粒子だと考えた。それまで原子はそれ以上分けられないと思われていたので,「原子の中に部品がある」という大きな発見になった。
空気などの気体も,雷のように高い電圧がかかると電流を通す(気体放電)。ガラス管に電極を封じ,気体を抜きながら高い電圧をかける。
ふつうの気圧では,電流は流れない。
管の中の気体が光り,電流が流れる。
気体の光が消え,陽極側のガラスが光る。
このとき陰極から出る流れを陰極線という。目に見えないが,当たったガラスや蛍光物質が光るので,どこに当たったかが分かる。
ネオンサインは,低い気圧のネオンを入れた管の真空放電だ。ネオン原子が光って,赤みがかったオレンジ色に輝く。ほかの気体を入れると,別の色になる。
蛍光灯も真空放電を使う。管の中の水銀の蒸気が,目に見えない紫外線を出す。その紫外線が管の内側に塗った蛍光物質に当たり,白い光に変わる。
どちらも,気圧の低い気体の中を電流が流れるときに光る,という同じしくみだ。
19 世紀の終わりには,陰極線が波か,粒子の流れかで意見が分かれていた。実験で分かった性質は,次の 3 つだ。
陰極線はまっすぐ進む
電場では,+の極板の側へ曲がる
電極の金属・気体の種類によらない
図は,極板の間の電場で曲がる陰極線。
この粒子を電子,その流れを電子線とよぶ。
電極や気体を変えても同じ粒子が出る。だから,すべての原子にふくまれる部品だと考えられた。
磁場で曲げるとき,電流の向きは陰極線の進む向きと逆にとり,フレミングの左手の法則を使う。
1897 年,トムソンは曲がり方から,この粒子が水素原子よりずっと軽いことを示した。
問題を読み込んでいます…
電子 1 個は,あまりに小さい。それでもトムソンは,曲がり方から電子の正体に迫った。
電子の電気量を \(-e\),質量を \(m\) とする。電場や磁場から受ける力は \(e\) に比例し,加速度は \(m\) に反比例する。
磁束密度 \(B\) の磁場に,電子を速さ \(v\) で垂直に入れると,半径 \(r\) の等速円運動をする。
ローレンツ力が向心力になる。
\(m\dfrac{v^2}{r} = \)\(evB\)
両辺を \(mvB\) で割る。
\(\dfrac{e}{m} = \)\(\dfrac{v}{Br}\)
\(B\) と \(r\) は測れる。しかし,速さ \(v\) が分からないので,磁場だけでは比電荷は決まらない。
長さ \(l\) の極板の間に,強さ \(E\) の電場をかける。そこへ,電子を速さ \(v\) で極板に平行に入れる。
運動方程式 \(ma = eE\) より,
\(a = \)\(\dfrac{e}{m}E\)
極板に平行な向きは等速で進む。
\(t = \)\(\dfrac{l}{v}\)
電場に平行な方向は等加速度運動。
\(y = \dfrac{1}{2}at^2 = \)\(\dfrac{e}{m}\cdot\dfrac{El^2}{2v^2}\)
\(y\) を測れば,比電荷が出そうだ。
\(\dfrac{e}{m} = \)\(\dfrac{2v^2y}{El^2}\)
しかし,ここでも速さ \(v\) が要る。
磁束密度 \(B\) の磁場も加え(紙面の表から裏の向き),電子がまっすぐ進むように調節する。
静電気力は上,ローレンツ力は下。
大きさが等しいと,電子は直進する。
\(eE = \)\(evB\)
電場だけ・磁場だけでは \(v\) が分からない。両方をかけて直進させれば,\(v\) が決まる。
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ミリカンは,小さな油滴の電気量を 1 個ずつ測った。並べると,ある規則が見えてくる。
極板の間に油滴(質量 \(m\))を吹き入れ,X 線を当てて帯電させる(電気量 \(-q\))。空気の抵抗力は速さに比例し,比例定数を \(k\) とする。
電場 \(E\) を調節し,油滴を止める。
\(mg = \)\(qE\)
やがて,一定の速さ \(v\) で落ちる。
\(mg = \)\(kv\)
2 つの式から \(mg\) を消すと,油滴の電気量が求まる。
電場 0 で落ちる油滴の運動方程式は,下向きを正として
$$ m\dfrac{dv}{dt} = mg - kv $$
速さ \(v\) が大きくなるほど右辺は小さくなり,\(mg = kv\) で加速が止まる。これが終端速度だ。
この式を解くと,速さは \(\dfrac{m}{k}\)〔s〕ほどの時間で,終端速度にほぼ達する。
\(m = 4.9\times10^{-15}\) kg,\(k = 3.2\times10^{-10}\) kg/s の油滴なら,約 \(1.5\times10^{-5}\) s。油滴は一瞬で終端速度になるので,顕微鏡では,はじめから一定の速さで落ちているように見える。
多くの油滴で \(q\) を測り,数直線に並べる。
点は,とびとびの位置にだけ並ぶ
並ぶ位置の間隔は,どこも同じ
どの位置も,間隔のちょうど何倍か
物体の電気量は,必ず \(e\) の整数倍になる。電気量は連続した値をとらない。
ある油滴は,電場 \(E = 1.0\times10^{5}\) V/m(電圧 500 V,間隔 5.0 mm)で静止した。
電場を 0 にすると,\(v = 1.5\times10^{-4}\) m/s の一定の速さで落ちた。抵抗力の比例定数は \(k = 3.2\times10^{-10}\) kg/s とする。
$$ q = \dfrac{kv}{E} = \dfrac{3.2\times10^{-10}\times1.5\times10^{-4}}{1.0\times10^{5}} $$ $$ {}= 4.8\times10^{-19}\ \text{C} $$
多くの油滴でこの計算をくり返し,求めた値を数直線に並べる。
測った \(q\) が 4.8,8.1,11.3,16.0(単位は \(10^{-19}\) C)だったとする。誤差があっても,次の手順で \(e\) が求まる。
差も,\(e\) の何倍かになる。
差は,ある値のほぼ 2,2,3 倍。
小さい順に,3,5,7,10 倍。
値の和は 40.2,整数の和は 25。
\(e = \dfrac{40.2\times10^{-19}}{25}\ \text{C}\)
差だけで決めない。差がどれも \(e\) の 2 倍のこともある。もとの値も割り切れるかを確かめる。
電気素量 \(e\) を,トムソンが測った比電荷で割れば,電子 1 個の質量が出る。ここからの \(m\) は電子の質量だ。
$$ m = e \div \dfrac{e}{m} = \dfrac{1.60\times10^{-19}}{1.76\times10^{11}} $$
水素原子の約 1840 分の 1
符号まで書くと \(-e\)
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比電荷・電気素量を求める問題の,よく出る形を押さえる。
静止していた電子を電圧 \(V_0\) で加速し,磁束密度 \(B\) の磁場に垂直に入れると,半径 \(r\) の円運動をした。
\(eV_0 = \dfrac{1}{2}mv^2\)
\(m\dfrac{v^2}{r} = evB\)
\(v = \dfrac{eBr}{m}\) を加速の式に代入。
\(\dfrac{e}{m} = \)\(\dfrac{2V_0}{B^2r^2}\)
直径や,入口から出口までの距離で与えられることもある。\(r\) がどこかを図で確かめる。
極板を出た電子は,直進して蛍光面に当たる。極板の中央から蛍光面までを \(L\) とし,蛍光面でのずれ \(y\) を求める。
「電場だけで曲げる」で \(y\) と書いた量。
\(y_1 = \dfrac{e}{m}\cdot\dfrac{El^2}{2v^2}\)
\(v_y = at\)。出口の向きの角を \(\theta\)。
\(\tan\theta = \dfrac{v_y}{v} = \dfrac{e}{m}\cdot\dfrac{El}{v^2}\)
蛍光面まで直進する。
\(y_2 = \left(L - \dfrac{l}{2}\right)\tan\theta\)
電子を電圧 \(V_0\) で加速してから,② の極板に入れる。蛍光面でのずれは,加速電圧で決まる。
\(eV_0 = \dfrac{1}{2}mv^2\)
\(mv^2 = 2eV_0\) を入れる。
\(y = \)\(\dfrac{ElL}{2V_0}\)
同じ電圧で加速すれば,ずれは比電荷によらない(\(e\) と \(m\) が消える)。
電場をかけたまま,一定の速さで上昇させる測り方も出る。落下の速さを \(v_1\),上昇の速さを \(v_2\) とする。
\(mg = kv_1\)
抵抗力は下向きになる。
\(qE = mg + kv_2\)
\(q = \)\(\dfrac{k(v_1 + v_2)}{E}\)
抵抗力は,いつも動く向きと逆。上がるときは,重力と同じ下向きにはたらく。
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