物理 > 第3編 波 > 第1章 波の伝わり方
2 つの波が出会うと,どうなるか。物理基礎の 3 つをふり返る。
波 1 だけがあるときの変位を \(y_1\)〔m〕,波 2 だけがあるときの変位を \(y_2\)〔m〕とする。変位は,上向きを正にとる。
図は,逆向きに進む 2 つのパルスが重なり,すれちがうようすだ。
山と山が重なると高くなり,山と谷が重なると打ち消しあう。波そのものは消えない。
2 人が同時に話しても,それぞれの声を聞き分けられる。音の波も,重なったあとは元の形で進むからだ。
波長 \(\lambda\)〔m〕・振幅 \(A\)〔m〕・周期 \(T\)〔s〕の等しい 2 つの正弦波が,同じ速さで逆向きに進んで重なる。
2 つの波が近づいて重なると,重なった所に実線(2 つを足した波)ができる。実線は左右どちらにも進まない。
節の位置は,時間がたっても動かない。
腹は,となりあう節と節のまん中にある。腹は 2 つの波がいつも強めあう点,節はいつも打ち消しあう点だ。
両端から同位相の波を送ると,真ん中の点には 2 つの波が同時に届く。
変位がいつも同じ向きで重なるので,真ん中は腹になる。
「② 正弦波の式」の形で,\(x\) 軸の正の向きと負の向きに進む 2 つの波を書く。
$$ y_1 = A\sin 2\pi\left(\dfrac{t}{T} - \dfrac{x}{\lambda}\right), $$ $$ y_2 = A\sin 2\pi\left(\dfrac{t}{T} + \dfrac{x}{\lambda}\right) $$
和積の公式を使って 2 つを合わせる。
$$ \sin\alpha + \sin\beta = 2\sin\dfrac{\alpha + \beta}{2}\cos\dfrac{\alpha - \beta}{2} $$
\(\alpha\),\(\beta\) を,\(y_1\),\(y_2\) の \(\sin\) の中とすると,
$$ \dfrac{\alpha + \beta}{2} = \dfrac{2\pi t}{T}, $$ $$ \dfrac{\alpha - \beta}{2} = -\dfrac{2\pi x}{\lambda} $$
\(\cos\) は,中の符号を変えても同じ値なので,\(y = y_1 + y_2\) は次の形になる。
$$ y = 2A\cos\dfrac{2\pi x}{\lambda}\cdot\sin\dfrac{2\pi t}{T} $$
後ろの \(\sin\) は,周期 \(T\) の振動だ。前の \(2A\cos\) の部分の大きさが,位置 \(x\) での振幅になる。
\(\cos\) が \(\pm 1\) になる位置が腹,0 になる位置が節だ。どちらも \(x\) だけで決まり,時刻によらない。だから波形は進まない。
節の位置は,\(\dfrac{2\pi x}{\lambda} = \dfrac{\pi}{2},\ \dfrac{3\pi}{2},\ \cdots\) を解いて,
\(x = \dfrac{\lambda}{4},\ \dfrac{3\lambda}{4},\ \dfrac{5\lambda}{4},\ \cdots\)
となりあう節は,半波長ずつはなれている。
\(x = 0\) は,2 つの波がいつも同位相で重なる点で,腹になっている。
波は,媒質の端ではね返る(反射)。はね返る前の波を入射波,あとの波を反射波という。
山は山のまま反射する
山は谷になって反射する
端の先まで,同じ形でのばす。
のばした部分の上下を反転する。
折り返した形が,反射波だ。
図の藍の破線が入射波,青緑の破線が反射波,紫の実線が合成波だ。
入射波と反射波が重なり,定在波ができる。端の点は,自由端なら腹,固定端なら節になる。
弦楽器の弦や,管楽器の中の空気でも,反射した波が重なって定在波ができる(音の章で学ぶ)。
問題を読み込んでいます…
水面の 2 か所を同じリズムでたたく。2 つの波はどう重なるか。
波面の作図 → 粒子説との対立 → 干渉の実験の順に,光は波だと認められていった。
ホイヘンスは,振り子時計を発明し(1656 年),土星の環の正体を見ぬいた天文学者でもある。
ニュートンの名声もあって,粒子説が 100 年近く主流だった。20 世紀には,光が粒子としてもふるまうことが分かる。
頭の立体の図では,大きくゆれる所と,ほとんどゆれない所が,すじのように並ぶ。どこがどちらになるかを,上から見た図で調べる。
図の実線は山,破線は谷の位置だ(ある瞬間)。
2 つの波が強めあい,大きく振動する
2 つの波が打ち消しあい,ほとんど振動しない
垂直二等分線の上は,2 つの波源から同じ距離で,腹線だ。そこから外へ,節線と腹線が交互に並ぶ。
強めあうか弱めあうかは,場所だけで決まる。だから,水面に動かない模様(双曲線)ができる。
ノイズキャンセリングのイヤホンは,マイクで周りの騒音を拾い,それと逆位相の音をスピーカーから出す。
2 つの音は耳の所で弱めあうので,騒音が小さく聞こえる。干渉を,わざと「弱めあう」側で使っている。
図の上は水面,下は P の振動だ。
強めあう:山と山,谷と谷
弱めあう:山と谷
強めあう:常に同位相
弱めあう:常に逆位相
強めあう:\(0,\ \lambda,\ 2\lambda,\ \cdots\)
弱めあう:\(0.5\lambda,\ 1.5\lambda,\ \cdots\)
同位相の波源 \(\mathrm{S}_1\),\(\mathrm{S}_2\) を結ぶ線分の上で,弱めあう点の数を求める。この数が,波源の間を通る節線の本数だ。
\(\mathrm{S_1P} = l_1\),\(\mathrm{S_2P} = l_2\) は,和が \(\mathrm{S_1S_2}\) なので,
\(\lvert l_1 - l_2\rvert \lt \mathrm{S_1S_2}\)
\(\left(m + \dfrac{1}{2}\right)\lambda\)\(\lt \mathrm{S_1S_2}\)
\(m = 0\) から数える。1 つの \(m\) に左右 2 個。
線分の上は定在波だ。中点から \(x\)〔m〕の点では,一方の波源に \(x\) 近づき,他方から \(x\) 遠ざかるので,
\((\text{行路差}) = 2x\)
弱めあう条件に入れると,節は,中点から 4 分の 1 波長の所から,半波長ごとに並ぶ。逆位相の波源なら,中点が節になる。
2 つの波源の振動がずれていると,干渉の模様もずれる。点 \(\mathrm{P}\) での重なり方は,2 つのずれを足して決める。
行路差 \(\lambda\) あたり,位相は \(2\pi\) ずれる。
波源の振動の位相の差も,合わせて考える。
強めあう(腹線)。
弱めあう(節線)。
逆位相(ずれ \(\pi\))の波源なら,行路差 0 の垂直二等分線は節線。
反射の法則より,壁で反射した波は,壁の向こうの「鏡に映した波源」から来たとみなせる。反射で山が谷になるなら,その波源は逆位相とみなす。
問題を読み込んでいます…
波は壁ではね返り,浅い所で曲がる。どちらも,角度に決まりがある。
平面波を,壁(境界面)に斜めに当てる。境界面に垂直な直線を,境界面の法線という。
図の藍は入射波,青緑は反射波。緑の矢印が,波の進む向きだ。
反射波は,入射波と同じ媒質を進む。反射しても,速さと波長は変わらない。
水面波は,水が浅い所ほど遅く進む。深い所(媒質 1)から浅い所(媒質 2)へ,斜めに平面波を送る。
遅い媒質に入ると,進む向きは法線に近づく。
水面波は浅い所,音は冷たい空気,光は水やガラスの中。
境界面では,屈折と同時に反射も起こる。屈折の向きは,屈折の法則(スネルの法則)で決まる。
\(n_{12}\) は 2 つの媒質で決まる値で,媒質 1 に対する媒質 2 の相対屈折率という。
媒質 2 のほうが遅いとき,\(n_{12} \gt 1\) だ。光では「光学的に密」ともいう。
遅いかどうかは,かたさでは決まらない(音は鉄の中のほうが速い)。
入射角・反射角・屈折角は,境界面ではなく,法線から測る。
屈折の法則に入れる。
$$ \dfrac{\sin 60^\circ}{\sin r} = 1.5 $$
$$ \sin r = \dfrac{\sin 60^\circ}{1.5} $$ $$ {}= \dfrac{\sqrt{3}}{2} \times \dfrac{2}{3} = \dfrac{\sqrt{3}}{3} \fallingdotseq 0.58 $$
\(r\) はおよそ \(35^\circ\)。屈折角は,入射角より小さい。
媒質 2 での速さと波長は,どちらも媒質 1 での値の 1.5 分の 1(約 0.67 倍)になる。
入試の図では,角が「波面と境界面のなす角」で与えられることが多い。これを入射角に読みかえる。
波面と射線,境界面と法線は,どちらも垂直だ。
波面と境界面の角は,入射角に等しい。
図の波面の間隔は,その媒質での波長だ。
屈折の法則を,もう一度書く。
\(n_{12} = \dfrac{v_1}{v_2} = \dfrac{\lambda_1}{\lambda_2}\)
媒質 2 の速さと波長について解くと,次の表になる。
| 量 | 媒質 2 では |
|---|---|
| 速さ | \(v_2 = \dfrac{v_1}{n_{12}}\) |
| 波長 | \(\lambda_2 = \dfrac{\lambda_1}{n_{12}}\) |
| 振動数 | 変わらない |
逆に,媒質 2 から媒質 1 へ進むときは,\(v_1\) と \(v_2\) が入れかわるので,
\(n_{21} = \)\(\dfrac{1}{n_{12}}\)
🔍 屈折の法則 の式で,速さの比と波長の比が等しいわけを,深さのちがうプールで確かめる。
水面波は,浅い所ほど遅く進む(浅いと,水の動きが底の影響を受ける)。深い所と浅い所が,速さのちがう 2 つの媒質になる。
斜めに入ると,波面のうち先に浅い所へ入った側から遅くなる。そのため,波面が境界で折れ曲がる(図の入射角 \(i\) を大きくする)。
同じ時間に通る山の数は,両側で同じ(波は境界でたまらない)。
振動数 \(f\) は,屈折しても変わらない。
物理基礎 \(v = f\lambda\) で,\(f\) が共通なので,
\(\dfrac{v_1}{v_2} = \dfrac{f\lambda_1}{f\lambda_2} = \dfrac{\lambda_1}{\lambda_2}\)
屈折の法則のもう 1 つの等号(sin の比 = 速さの比)は,波面の作図から出る(✏️ 屈折の法則を導く)。
屈折で変わるのは,速さ \(v\) と波長 \(\lambda\) だけだ。\(f\) は波源で決まり,媒質が変わっても変わらない。
問題を読み込んでいます…
寄せる波の山は,横一線にそろって進む。次にどこへ進むかを,作図で決める。
水面の 1 点を振動させると,円形の波紋が広がる。同じ円の上の点は,そろって山になり,そろって谷になる。
波面が平面の波(水面では直線)
波面が球面の波(水面では円)
図は,身の回りの水面の波(🌊 水面)と,空間を伝わる波(🧊 立体)を切りかえて示す。水面では,山の連なり(藍の線)が波面だ。
射線は,波の進む向きを示す線(図の緑の矢印)。
波面の上の各点を,新しい波源とみなす。そこから出る球面波を素元波という。
波の速さを \(v\)〔m/s〕とすると,\(t\)〔s〕後の素元波の半径は \(vt\)。
次の波面も平面。\(vt\) だけ平行に進む
次の波面も球面。半径が \(vt\) だけ大きくなる
図の橙茶の円弧が素元波,藍の線が次の波面だ。
この考え方で,反射と屈折の法則も導ける。
遠浅の海岸では,岸に近い(浅い)所ほど波が遅い。沖から斜めに来た波の,波面の向きを作図で決める。
波面の各点から,その場所の速さで素元波をかく。
浅い所の素元波は小さいので,波面が曲がる。
射線は浅いほうへ曲がり,波面は海岸線に平行に近づく。
入射波の波面 \(\mathrm{AB}\) の端 \(\mathrm{A}\) が壁に達してから,端 \(\mathrm{B}\) が射線にそって壁の点 \(\mathrm{D}\) に着くまでを考える(\(\angle\mathrm{ABD}\) は直角)。波の速さを \(v\)〔m/s〕,かかる時間を \(t\)〔s〕とする。
\(\mathrm{B}\) は \(\mathrm{BD}\) 進み,\(\mathrm{A}\) の素元波は円 \(\mathrm{O}\) になる。
\((\text{円 O の半径}) = \)\(vt = \mathrm{BD}\)
円 \(\mathrm{O}\) への接線 \(\mathrm{DC}\) が,反射波の波面。
斜辺 \(\mathrm{AD}\) が共通で,\(\mathrm{BD}\) と \(\mathrm{CA}\) が等しい。
\(\triangle\mathrm{ABD} \equiv \triangle\mathrm{DCA}\)
波面と壁のなす角が等しい。
\(\angle\mathrm{BAD} = \angle\mathrm{CDA}\)
波面は射線に,壁は法線に垂直なので,\(\angle\mathrm{BAD}\) は入射角 \(i\),\(\angle\mathrm{CDA}\) は反射角 \(j\) に等しい。
\(i = \angle\mathrm{BAD} = \angle\mathrm{CDA} = j\)
媒質 1 から媒質 2 へ進む波も,同じ作図をする。波の速さを媒質 1 で \(v_1\)〔m/s〕,媒質 2 で \(v_2\)〔m/s〕,\(\mathrm{B}\) が \(\mathrm{D}\) に着くまでの時間を \(t\)〔s〕とする。
速さ \(v_2\) で時間 \(t\) 進み,円 \(\mathrm{O}\) をつくる。
\(\mathrm{D}\) から円 \(\mathrm{O}\) に引いた線\(\mathrm{DC}\) が屈折波の波面。
反射と同じ理由で,
\(\angle\mathrm{BAD} = i,\quad \angle\mathrm{ADC} = r\)
直角三角形 \(\mathrm{ABD}\),\(\mathrm{ACD}\) で,
\(\mathrm{AD}\sin i = \mathrm{BD} = v_1 t\)
\(\mathrm{AD}\sin r = \mathrm{AC} = \)\(v_2 t\)
辺ごとに割ると,\(\mathrm{AD}\) と \(t\) が消える。
\(\dfrac{\sin i}{\sin r} = \)\(\dfrac{v_1}{v_2}\)
屈折の法則の,速さの比の式が導けた。波長の比も等しいことは,🎵 屈折で変わらない量 で見たとおりだ。
反射も屈折も同じ作図。ちがうのは,円 \(\mathrm{O}\)(\(\mathrm{A}\) の素元波)の大きさだけ。
問題を読み込んでいます…
すき間を通った波は,扇のように広がる。広がり方は,波長で変わる。
図で,すき間の幅を \(d\)〔m〕,波長を \(\lambda\)〔m〕とする。
\(\lambda\) が \(d\) と同程度以上で,回折が目立つ
波長が長いほど,回折しやすい
すき間が波長より十分に広いと,波はほぼまっすぐ進む。
すき間の各点を波源とみなすと,端から出る素元波が背後へ広がる。障害物のふちでも,同じように陰へまわりこむ。
人の声の波長は,数十 cm〜数 m。塀や建物の陰にも,まわりこんで届く。
光の波長は 1 mm の 1000 分の 1 以下。ふだんは回折が目立たない。
すき間の各点からの素元波が,少しずれた向きでどう重なるかを見る。図は,長い波(上)と短い波(下)をくらべる。
上半分の点と,幅の半分だけ下の点を組む。
下の点から出る波は,少し遠回りになる(図)。
2 つの波は逆位相で重なり,打ち消しあう。
どの組も同じなので,その向きには波が届かない。
少しずらしても打ち消しあわず,横にも届く → 回折しやすい
少しずらすと,すぐ打ち消しあい,横には届かない → 回折しにくい
波長がすき間の幅より長いと,どこまでずらしても遠回りは半波長に届かない。波は,前方のどの向きにも届く。
遠くの台風から届くうねりは,周期が 10 秒をこえ,波長が 100 m 以上になることもある。
波長が長いので,防波堤のすき間から港の奥までまわりこみやすい。港をつくるときは,回折で入りこむ波の高さも計算して,防波堤の向きや長さを決める。
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