物理 > 第3編 波 > 第1章 波の伝わり方
スタジアムのウェーブでは,人は立って座るだけなのに,山が横へ進む。波も同じしくみだ。
水平に張ったひもの端を,1 回だけ上下に動かす。山が 1 つ,ひもを伝わっていく。
図の目印は,上下に動くだけで,右へは進まない。
波を伝える物質は,その場で振動するだけ。波といっしょには進まない。
海の波は,風の強い沖で生まれ,何千 km もはなれた海岸まで届く。海水がそこまで流れてくるわけではない。
波は,物質を運ばずにエネルギーだけを運ぶ。浜の砂をけずり,船をゆらすのは,このエネルギーだ。
ひもの端を 1 回だけ振ってできる単独の波をパルスという。たえず振動させると,連続的な波ができる。
ひもの端を,上下に単振動させる。
となりの点は,遅れて同じ振動をする。
連ねた線は,正弦曲線になる。
図の左は等速円運動で,その高さが端の変位になる。矢印は,各点の変位だ。
まず,波形の各部に名前をつける。そのうえで,波を表す 4 つの量を表にまとめる。
| 要素 | 記号 | 説明 |
|---|---|---|
| 波長 | \(\lambda\)〔m〕 | 山と山の間隔など,波 1 つ分の長さ |
| 速さ | \(v\)〔m/s〕 | 山や谷が進む速さ |
| 周期 | \(T\)〔s〕 | 媒質の各点が,1 回の振動に要する時間 |
| 振動数 | \(f\)〔Hz〕 | 媒質の各点が,1 秒間に振動する回数 |
波源が 1 回振動するたびに,波 1 つ分が送り出される。これを使って,波の速さ \(v\) を表す。
1 周期 \(T\) の間に,波の先端は 1 波長 \(\lambda\) 進む。
\(v = \)\(\dfrac{\lambda}{T}\)
1 回の振動に \(T\)〔s〕かかる。1 秒間では何回か。
図は,同じひもで振動数だけを変えたもの。波の速さは媒質で決まるので変わらず,振動数が大きいほど波長は短い。
1 秒間に \(f\) 個の波が通る。波 1 個の長さは \(\lambda\) だ。こう考えても,同じ式が出る。
振動数 \(f = 0.50\) Hz,波長 \(\lambda = 4.0\) m の波がある。
$$ v = f\lambda = 0.50 \times 4.0 = 2.0\ \text{m/s} $$
$$ T = \dfrac{1}{f} = \dfrac{1}{0.50} = 2.0\ \text{s} $$
周期 2.0 s の間に,波はちょうど 1 波長(4.0 m)だけ進んでいる。
問題を読み込んでいます…
波が通るとき,媒質の各点は,どちら向きに,どのくらいの速さで動くのか。波形から読み取る。
位置を \(x\),変位を \(y\) として,ある瞬間の波形をかく。波は,形を変えずに進んでいく。
図の破線が,少しあとの波形だ。
少しあとの各点は,破線の上にある。
左へ進む波では,矢印はすべて逆向きだ。
実線と破線の差が,媒質の動いたぶんだ。動く向きは,山と谷を境に入れかわる。境目の山と谷は,ほとんど動かない(図では矢印なし)。
ひもの各点が動くのは,\(y\) 軸の方向だけ。波形に沿って斜めには動かない。
媒質の各点は,波源と同じ振幅・周期で単振動をしている。単振動は,端で一瞬止まり,中心を最も速く通る。
図の矢印は,各点の速度を表す。長いほど速い。
媒質の速さは 0
媒質の速さは最大
変位が 0 の点が,上向きに動くか下向きに動くかは,上の定石で決める。
波の速さ \(v\) と,媒質の振動の速さは別のもの。
\(v\) は山や谷が進む速さ,媒質の速さは各点が上下に動く速さだ。
逆に,媒質の 1 点 \(\mathrm{P}\) の動く向きが分かれば,波の進む向きを決められる。
右へ進めた形と,左へ進めた形を考える。
動きと合うほうが,波の進む向きだ。
図の点 \(\mathrm{P}\) は,上向きに動いている。波形を右へ進めると \(\mathrm{P}\) の変位は大きくなるので,この波は右へ進んでいる。もし \(\mathrm{P}\) が下向きに動いていれば,波は左へ進んでいる。
山のすぐ先にある媒質は,これから上がる。山が近づいてくるからだ。谷の進む先では,逆になる。
右へ進む波では,波形が右下がりの所の媒質が上へ,右上がりの所の媒質が下へ動く。
山の右側の斜面は右下がりで,そこへ山が近づいてくるからだ。左へ進む波では,上下が逆になる。
斜面が急な所ほど,媒質は速く動く。傾きが 0 の山と谷では,媒質は一瞬止まっている。
問題を読み込んでいます…
波のグラフには,横軸が位置 \(x\) のものと,時刻 \(t\) のものがある。同じ曲線でも,意味がちがう。
縦軸は,どちらも変位 \(y\)。横軸が \(x\) の図を \(y\)–\(x\) 図,横軸が \(t\) の図を \(y\)–\(t\) 図という。図は,\(y\)–\(x\) 図と,その中の印を付けた 1 点の \(y\)–\(t\) 図だ。
ある時刻の波形。波全体の写真
ある位置の媒質の振動。1 か所の動き方
どちらも正弦曲線になる。グラフを見たら,まず横軸を確かめる。
\(y\)–\(t\) 図の曲線は,波の形ではない。1 つの点が上下に動いた記録だ。
\(y\)–\(x\) 図からは波長,\(y\)–\(t\) 図からは周期が読める。
2 つがそろえば,波の速さ \(v = \dfrac{\lambda}{T}\) が出る。
時刻 0 の \(y\)–\(x\) 図から,時刻 \(t\) の波形をかく。波の速さを \(v\) とする。
進む距離 \(= \)\(vt\)
波の進む向きに,その距離だけずらす。
周期 \(T\) がたつと,もとの波形に重なる。
半周期たつと,山と谷がちょうど入れかわる。
長い時間のあとは,周期の整数倍を引いた残りの時間だけ進める。
波長 4.0 m,周期 2.0 s の波が,\(x\) 軸の正の向きに進む。波の速さは \(v = 2.0\) m/s だ。
0.50 s 後……進む距離を求める。
$$ vt = 2.0 \times 0.50 = 1.0\ \text{m} $$
波形を,\(x\) 軸の正の向きに 1.0 m(4 分の 1 波長)だけずらせばよい。
30 s 後……30 s は,周期のちょうど 15 倍だ。波形は,時刻 0 のものと同じになる。
31 s 後……15 周期(30 s)を引くと,残りは 1.0 s。半周期ぶん,つまり 2.0 m だけずらせばよい。
時刻 0 の \(y\)–\(x\) 図と波の速さ \(v\) から,ある位置の媒質の \(y\)–\(t\) 図をつくる。
1 波長 \(\lambda\) 進むのにかかる時間だ。
\(T = \)\(\dfrac{\lambda}{v}\)
その位置の,\(t = 0\) の変位を読む。
波形をわずかに進めて,上か下かを見る。
出発点から,周期 \(T\) でくり返す。
出発点が同じ 0 でも,最初の向きで曲線は上下が逆になる。出発点が山なら下がり,谷なら上がる。
逆に,\(y\)–\(t\) 図から波形をつくる問題も出る。波長を求め,その点が直後に上がるなら,波の来る側に山をかく。
問題を読み込んでいます…
波には,媒質のゆれる向きがちがう 2 つの種類がある。音は,波形が目に見えないほうの波だ。
波は,媒質の振動方向によって 2 種類に分けられる。
点は上下に振動し,山と谷が進む
点は左右に振動し,こみ合った所が進む
どの物質の中も伝わる(液体・気体も)
固体の中だけを伝わる
光も横波だが,伝わるしくみがちがう。液体や気体の中も,真空の中も伝わる。
水面の波は,横波でも縦波でもない。水は,円をえがくように動いている。
地震の波には,縦波の P 波と,横波の S 波がある。P 波のほうが速く,先に届いて小さなゆれを起こす。あとから届く S 波が,大きなゆれを起こす。
S 波は横波なので,液体の中を伝わらない。地球の内部に S 波の通れない層があることから,外核が液体だと分かった。
縦波は,波形が目に見えない。そこで,各点の変位を回して立て,横波のようなグラフにする。
つりあいの位置からの変位
反時計回りに 90°
なめらかに結ぶと,グラフになる
\(x\) 軸の正の向きの変位を,\(y\) 軸の正の向きにとる(→ は ↑,← は ↓)。グラフの山は右向き,谷は左向きの変位を表す。
横波のように表したグラフから,媒質の集まっている所を読み取る。
山の点は右へ,谷の点は左へずれている。
両側から寄っている所に,媒質が集まる。
図の下の段は,実際の媒質の並びだ。橙の点は,1 つの媒質の目印。
| グラフの形 | 両側のずれ | 疎密 |
|---|---|---|
| 右下がりで\(x\) 軸と交わる点 | 寄っている | 密 |
| 右上がりで\(x\) 軸と交わる点 | はなれている | 疎 |
| 山・谷 | 同じ向き | もとのまま |
最も密な点・最も疎な点は,変位が 0 の点だ。山や谷ではない。
ここで読んでいるのは変位(ずれ)で,媒質の動く向きではない。
問題を読み込んでいます…
入試では,2 枚のグラフの組と,縦波のグラフがよく出る。読み方の型を 3 つ押さえる。
時刻 0 の \(y\)–\(x\) 図と,原点の媒質の \(y\)–\(t\) 図が与えられる。波の進む向きと速さを求める。
図では,原点は直後に上へ動く。
わずかに進めた波形を,両方かく。
原点が上がるほうが,波の進む向きだ。
この波は,\(x\) 軸の負の向きに進んでいる。速さは,2 つの図から読んだ \(\lambda\) と \(T\) で出す。
\(v = \dfrac{\lambda}{T}\)
\(x\) 軸の正の向き(右向き)に進む縦波を,横波のように表した。振幅を \(A\) として,点 \(\mathrm{a}\)〜\(\mathrm{g}\) の媒質のようすを読む。
右下がりで軸と交わる \(\mathrm{c}\) が密。
上向きの矢印は,右向きの速度を表す。
| 点 | 変位 | 疎密 | 媒質の速度 |
|---|---|---|---|
| \(\mathrm{a}\)・\(\mathrm{e}\) | \(0\) | 疎 | 左向き |
| \(\mathrm{b}\)・\(\mathrm{f}\) | \(+A\) | — | \(0\) |
| \(\mathrm{c}\)・\(\mathrm{g}\) | \(0\) | 密 | 右向き |
| \(\mathrm{d}\) | \(-A\) | — | \(0\) |
\(\mathrm{b}\)・\(\mathrm{d}\)・\(\mathrm{f}\) は振動の端なので,媒質は一瞬止まっている。密でも疎でもない。
密の点の媒質は,波の進む向きに最大の速さで動く。疎の点は,その逆向きだ。
左へ進む波でも,密・疎の位置は変わらない。変わるのは,媒質の速度の向きだけだ。
媒質の各点は,振幅 \(A\)・周期 \(T\) の単振動をする。その速さの最大値 \(u\) を求める。
\(\omega = \dfrac{2\pi}{T}\)
\(u = \)\(A\omega = \dfrac{2\pi A}{T}\)
\(y\)–\(t\) 図の傾きが,媒質の速度だ。
\(u\) は振幅で変わり,波の速さ \(v = f\lambda\) とは別の量だ。
媒質の加速度の大きさは,速さとは逆に,山と谷で最大になる。
問題を読み込んでいます…