物理 > 第1編 力と運動 > 第4章 円運動と万有引力

④ 万有引力

🪐 1. ケプラーの法則

惑星は太陽のまわりをどう回るのか。答えは,3 つの規則にまとまる。

📜 歴史:3 つの法則が見つかるまで(人物と年表)

観測 → 規則 → 原因 → 定数の測定の順に,200 年以上かけて進んだ。

  1. 1543コペルニクス地動説(軌道は円と考えた)
  2. 1576〜1601ティコ・ブラーエ望遠鏡なしで火星を 20 年以上観測
  3. 1609ケプラー第一・第二法則
  4. 1619ケプラー第三法則 \(T^2 \propto a^3\)
  5. 1687ニュートン万有引力の法則
  6. 1798キャベンディッシュ\(G\) を測定 → 地球の質量

ケプラーはティコの助手だった。火星の軌道を円と仮定して計算すると,角度で 8 分(0.13°)だけ観測と合わない。

ティコの観測の精度は約 2 分。「ティコが 8 分も間違えるはずがない」と,このズレを本物だと信じたことが,円を捨ててだ円にたどり着く出発点になった。

☀️ 第一法則:軌道の形

惑星は,太陽を 1 つの焦点とするだ円上を運動する。

ケプラーは火星の観測記録から,軌道が円ではないと突き止めた。太陽があるのは中心ではなく焦点だ。

💡
焦点……軌道の内側にある 2 点。ここからの距離の和は,軌道上のどこでも同じ
💡
近日点・遠日点……軌道の上で,太陽に最も近い点・最も遠い点(地球のまわりなら近地点・遠地点)
💡
半長軸 \(a\)(長半径ともいう)・半短軸 \(b\)……中心から,長い方・短い方の端までの距離

📐 第二法則:面積速度一定

惑星と太陽とを結ぶ線分が一定時間に通過する面積は一定である。(面積速度一定の法則)
💡
面積速度……太陽と惑星を結ぶ線分(動径)が,単位時間に通過する面積
  • 🔵 点の間隔(同じ時間ごと)

    近日点では速く,遠日点では遅い

  • 🟩 緑の面積 \(S_1\)・\(S_2\)

    同じ時間に通過した面積は,形が違っても広さは同じ

📏 面積速度を式で表す

  1. 三角形 \(\mathrm{SPP}'\) をかく

    太陽 \(\mathrm{S}\) を回る惑星が,\(\Delta t\) の間に \(\mathrm{P}\) から \(\mathrm{P}'\) へ進む。

  2. 底辺と高さを読む

    底辺は \(r\)。高さは \(v\sin\theta\,\Delta t\)(\(\theta\):動径と速度のなす角)。

  3. 面積 \(\Delta S\) を \(\Delta t\) で割る

    $$ \Delta S = \dfrac12 \times r \times v\sin\theta\,\Delta t $$

$$ \dfrac{\Delta S}{\Delta t} = \dfrac{1}{2}\,rv\sin\theta = \text{一定} $$
\(r\)〔m〕:太陽との距離
\(v\)〔m/s〕:惑星の速さ
\(\theta\)〔rad〕:動径と速度のなす角

近日点(距離 \(r\)・速さ \(v\))と遠日点(距離 \(R\)・速さ \(V\))では \(\sin\theta = 1\)。1 秒間に通過するのは,直角三角形だ。

📌 ポイント

\(\dfrac{1}{2}rv = \)\(\dfrac{1}{2}RV\)

この形が使えるのは,速度が動径に垂直な2 点だけ。

つねに 1 点を向く力(中心力)なら,第二法則は成り立つ。

🔬 もう一歩:なぜ面積速度は変わらないのか(中心力と角運動量)

中心力とは,つねに決まった 1 点を向く力のこと。太陽が惑星を引く万有引力は,いつも太陽を向くので中心力だ。

力がなければ等速直線運動で,通過する面積は毎回同じになる。中心力が変えるのは,速度の動径方向の成分だけ。この成分は三角形の高さを変えないので,面積速度は変わらない。

力の大きさが距離によってどう変わっても,中心力でありさえすれば成り立つ。

大学では \(mrv\sin\theta\) を角運動量とよぶ。面積速度一定は,角運動量保存の法則と同じ内容だ。

⏱️ 第三法則:周期と軌道の大きさ

焦点の天体が同じとき,惑星の公転周期 \(T\) の2 乗と半長軸 \(a\) の3 乗の比は,すべての惑星で一定となる。
\(\dfrac{T^2}{a^3}\)\(\; = k\ (\text{一定})\)
\(T\)〔s〕:公転周期(1 周にかかる時間)
\(a\)〔m〕:半長軸
\(k\):定数
  • 🐢 外側ほど時間がかかる

    道のりが長いうえに,動きも遅い

  • 🟰 比はそろう

    外側の半長軸がいくつでも,比の値は内側と同じ

周期 \(T,\ T'\),半長軸 \(a,\ a'\) の 2 つの惑星を,式で結ぶ。

\(\dfrac{T^2}{a^3} = \)\(\dfrac{T'^2}{a'^3}\)

🔥 ここが超重要

\(k\) は宇宙共通の定数ではない。\(k\) は中心天体の質量で決まる(理由は「人工衛星」で導く)。

🧮 計算例:天文単位と年ではかる(ハレー彗星の周期)

天文単位(記号 au)は,地球と太陽の平均距離を 1 とする長さの単位(\(1\ \text{au} = 1.5 \times 10^{11}\ \text{m}\))。

半長軸を au,周期を年ではかると,地球は \(a = 1,\ T = 1\)。だから太陽を回る天体では \(k = 1\) となる。

$$ T^2 = a^3 \qquad (\,a\ \text{は au,}\ T\ \text{は年}\,) $$

惑星\(a\)〔au〕\(T\)〔年〕\(\dfrac{T^2}{a^3}\)
水星0.3870.2411.00
地球1.0001.0001.00
火星1.5241.8811.00
木星5.20311.861.00

ハレー彗星の半長軸は約 18 au。彗星も太陽を回るので,同じ式が使える。

$$ T = \sqrt{a^3} = \sqrt{18^3} \fallingdotseq 76 \text{ 年} $$

実際の周期(約 76 年)と合う。半長軸が分かれば,周期を予言できる。

ケプラーは「どう動くか」を見つけた。「なぜ」を与えたのがニュートンだ。

✏️ 問題:ケプラーの法則

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🍎 2. 万有引力の法則

りんごは落ちるのに,月はなぜ落ちてこないのか。2 つは,同じ 1 つの力で説明できる。

りんごは木から落ちるのに,なぜ月は地球に落ちてこないのか?
月まで離れると,地球の引力は届かないから
月も落ち続けているが,横向きに速く動いているので地面に届かないから
月はりんごよりずっと重いから
月にも地球の引力ははたらいていて,月は地球に向かって落ち続けている。ただし横向きに十分速く動いているので,落ちながらも地面に届かず,回り続ける。りんごを落とす力と月を回す力が同じものだと確かめたのがニュートンだ(このカードの最後の「もう一歩」)。

🪐 導出:惑星を回す力は,どんな形か

ニュートンはケプラーの法則から逆に,太陽が惑星を引く力 \(F\) の形を割り出した。惑星(質量 \(m\))は,半径 \(r\)・周期 \(T\) の等速円運動とみなす。

  1. 円運動の運動方程式(向心力は \(F\))

    角速度を \(\omega\) とする。

    \(F = \)\(mr\omega^2\)

  2. 角速度を周期で表す

    1 周 \(2\pi\) を,周期 \(T\) で回る。

    \(\omega = \)\(\dfrac{2\pi}{T}\)

    \(F = \)\(mr\left(\dfrac{2\pi}{T}\right)^2 = \dfrac{4\pi^2 m r}{T^2}\)

  3. ケプラーの第三法則で \(T\) を消す

    \(T^2 = kr^3\) を代入する(円軌道では \(a = r\))。

    \(F = \)\(\dfrac{4\pi^2 mr}{kr^3} = \dfrac{4\pi^2}{k}\cdot\dfrac{m}{r^2}\)

力 \(F\) は,質量 \(m\) に比例し,半径 \(r\) の 2 乗に反比例する。

作用反作用の法則より,惑星も太陽を同じ力で引く。だから太陽の質量 \(M\) も,同じ形で効く。

🧲 万有引力の法則

ニュートンは,この力を太陽と惑星だけのものとは考えなかった。

💡
万有引力……すべての物体の間ではたらく引力
2 つの物体は,質量の積に比例し,距離の 2 乗に反比例する大きさの力で引き合う。
\(F = \)\(G\dfrac{Mm}{r^2}\)
\(F\)〔N〕:万有引力の大きさ
\(G\)〔N·m²/kg²〕:比例定数
\(M,\,m\)〔kg〕:2 物体の質量
\(r\)〔m〕:2 物体の中心間の距離

図は,2 つの物体が引き合う力。下のグラフは,力 \(F\) と距離 \(r\) の関係だ。

  • 🔁 2 本の矢印

    いつも同じ長さ・逆向きになる

  • 📏 距離を変える

    距離が 2 倍で力は 4 分の 1,3 倍で 9 分の 1

  • 🏋️ 質量を変える

    \(M\) か \(m\) を半分にすると,力も半分

距離 \(r\) は,物体の中心と中心の間ではかる(球形の天体は,全質量が中心にある点とみなせる)。

🔬 発展:なぜだ円になるのか —— 速度ベクトルが円を描く

ふつうは微分方程式を解くが,速度ベクトルの動きに目を移すと,ほとんど計算せずに見えてくる。ファインマンが講義で紹介した筋を,5 段でたどる。

  1. 道具を 2 つ用意する

    使うのは,運動方程式と面積速度一定の 2 つだけ。\(\hat r\) は太陽から惑星へ向かう単位ベクトル,\(\theta\) は太陽から見た惑星の方向の角,\(h\) は面積速度の 2 倍だ。

    $$ \frac{\Delta \vec v}{\Delta t} = -\frac{GM}{r^2}\hat r, $$ $$ r^2 \frac{\Delta\theta}{\Delta t} = h\ (\text{一定}) $$

  2. 角度あたりの変化に直す

    「時間あたり」ではなく「角度あたり」で速度の変化を見る。2 式を割り算すると \(r^2\) が消える。

    $$ \frac{\Delta \vec v}{\Delta \theta} = -\frac{GM}{h}\,\hat r $$

    距離 \(r\) が消えたのは,力が \(\dfrac{1}{r^2}\) だからだ(これが逆二乗の指紋)。

  3. 速度の先端の動きを読む

    右辺の大きさは定数 \(\dfrac{GM}{h}\)。\(\theta\) が同じだけ進むごとに,速度ベクトルは同じ長さだけ太陽の向きへ倒れる。

    惑星が 1 周する間に \(\hat r\) は 1 回転するので,速度ベクトルの先端は円を描く(この円をホドグラフという)。ある固定ベクトル \(\vec c\) と,\(\hat r\) に垂直な単位ベクトル \(\hat\theta\) を使って書けば

    $$ \vec v = \vec c + \frac{GM}{h}\,\hat\theta $$

  4. 軌道の式を取り出す

    速度の \(\hat\theta\) 方向の成分は \(\dfrac{h}{r}\) なので,上の式の \(\hat\theta\) 成分をとる。角 \(\theta\) を \(\vec c\) に垂直な向きから測り,\(\vec c\) の大きさを \(c\) とすると

    $$ \frac{h}{r} = \frac{GM}{h} + c\cos\theta $$ $$ \Longrightarrow\quad r = \dfrac{\dfrac{h^2}{GM}}{1 + \dfrac{ch}{GM}\cos\theta} $$

  5. 曲線の種類を見分ける

    これは焦点を原点にした円錐曲線の式だ。\(\dfrac{ch}{GM}\) が離心率 \(e\) にあたり,\(e<1\) ならだ円,\(e=1\) なら放物線,\(e>1\) なら双曲線になる。

⚖️ 比例定数 \(G\) は,とても小さい

💡
万有引力定数 \(G\)……物体によらない定数。\(G = 6.67\times10^{-11}\) N·m²/kg²

\(G\) はとても小さい。引力が目立つのは,相手が天体のときだけだ。

初めて測ったのはキャベンディッシュ(1798)。地球の質量も,これで計算できた。

🌙 月は,なぜ落ちてこないのか

はじめの問いの答え:月も地球へ落ち続けている。

  • りんご……手を離れると,まっすぐ地面へ落ちる
  • 月……横に速く動きながら落ちるので,地面に届かず回り続ける
🎯 入試では

ケプラーの法則=経験則,万有引力の法則=その原因。迷ったら,運動方程式に万有引力を入れる。

🌕 もう一歩:りんごと月は,同じ力で落ちている(ニュートンの検証)

ニュートンは,月を回す力と,りんごを落とす力が同じものかを数で確かめた。

  • 月までの距離は,地球の半径の約 60 倍
  • 力が距離の 2 乗に反比例するなら,月での加速度は地表の 3600 分の 1 のはず
  • 月の向心加速度 \(r\omega^2\) を周期 27.3 日から計算すると,その値に合った

天(月)と地(りんご)を,同じ 1 つの式で書いたことになる。

「りんごが頭に落ちて思いついた」は後世の脚色。本人が語ったのは,りんごが落ちるのを見て「なぜ月は落ちてこないのか」と考えた,という話だ。

✏️ 問題:万有引力の法則

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🌍 3. 重力と万有引力

月では,同じ初速で 6 倍高く跳べる。「重さ」の正体は,足もとの天体の万有引力だ。

月の上では,なぜ体が軽くなるのか?
月には空気がないから
月は地球より質量がずっと小さいから
月は地球から遠く離れているから
体を引いているのは,足もとの天体だ。その強さは天体の質量と半径で決まり,空気の有無や地球からの距離は関係がない。月は半径が小さいぶん表面が中心に近いが,質量が地球の約 81 分の 1 しかないので,重力は約 6 分の 1 になる。

⚖️ 地表の重力加速度 \(g\)

重力加速度 \(g\) を,地球の質量 \(M\) と半径 \(R\) で表す。地表に,質量 \(m\) の物体を置く。

  1. 物体までの距離を決める

    全質量が中心にあるとみなす。距離は \(R\)。

  2. 重力の正体を見きわめる

    自転の遠心力を無視すると,重力 \(mg\) =万有引力。

  3. 同じ力を等号で結ぶ

    \(mg = \)\(G\dfrac{Mm}{R^2}\)

両辺を \(m\) で割ると,

\(g = \)\(\dfrac{GM}{R^2}\)
\(g\)〔m/s²〕:地表の重力加速度
\(G\)〔N·m²/kg²〕:万有引力定数
\(M\)〔kg〕:地球の質量
\(R\)〔m〕:地球の半径

\(m\) が消えた。\(g\) は物体の質量によらない——軽い物も重い物も,同じように落ちる。

🔥 ここが超重要

分母を払った \(GM = \)\(gR^2\) は,このあと何度も使う。式の \(GM\) を,\(g\) と \(R\) で書きかえられる。

🌀 自転の遠心力と重力

地上の物体は,地球と一緒に自転している。地上から見ると,万有引力のほかに遠心力もはたらく。

重力=万有引力と自転の遠心力の合力

緯度 \(\theta\) の地点で,質量 \(m\) の物体にはたらく遠心力の大きさ \(f\) を求める。自転の角速度を \(\omega\) とする。

  1. 回る円の半径を読む

    自転軸のまわりの円の半径は \(R\cos\theta\)。

  2. 遠心力の大きさを書く

    \(f = \)\(mR\omega^2\cos\theta\)

    赤道で最大,極でゼロになる。

  3. 万有引力とくらべる

    赤道でも,万有引力の約 290 分の 1 しかない。

結論:遠心力はごく小さい。だから問題では,重力 \(\fallingdotseq\) 万有引力としてよい。

🧮 計算例:遠心力は万有引力の何分の 1 か

遠心力がいちばん大きい赤道(\(\cos\theta = 1\))で,万有引力の大きさ \(F\) とくらべる。

  1. 比を文字式で表す

    \(g = \dfrac{GM}{R^2}\) より \(F = mg\) だから,

    $$ \dfrac{f}{F} = \dfrac{mR\omega^2}{mg} = \dfrac{R\omega^2}{g} $$

  2. \(R\omega^2\) を計算する

    \(R \fallingdotseq 6.4\times10^{6}\ \text{m}\)。自転は 1 日(\(8.64\times10^{4}\ \text{s}\))に 1 回転なので \(\omega \fallingdotseq 7.3\times10^{-5}\ \text{rad/s}\)。

    $$ R\omega^2 \fallingdotseq 0.034\ \text{m/s}^2 $$

  3. 比の値を出す

    \(g = 9.8\ \text{m/s}^2\) で割ると

    $$ \dfrac{f}{F} \fallingdotseq \dfrac{0.034}{9.8} \fallingdotseq \dfrac{1}{290} $$

実測の \(g\) は極で約 9.83,赤道で約 9.78 m/s²。同じ体重計でも,赤道のほうがわずかに軽く出る。

✏️ 問題:重力と万有引力

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🛰️ 4. 人工衛星の運動と第一宇宙速度

人工衛星は,なぜ落ちてこないのか。運動方程式で調べる。

🪐 円軌道の速さと周期

地球(質量 \(M\))の中心から半径 \(r\) の円軌道を,質量 \(m\) の衛星が速さ \(v\) で回る。

万有引力が向心力になる。
  1. 運動方程式を立てる

    中心向きの力は,図の赤い矢印だけ。

    \(m\dfrac{v^2}{r}\)\(\; = G\dfrac{Mm}{r^2}\)

  2. 速さ \(v\) について解く

    両辺に \(\dfrac{r}{m}\) を掛け,\(m\) を消す。

    \(v^2 = \)\(\dfrac{GM}{r}\)

  3. 周期 \(T\) を求める

    1 周の長さ \(2\pi r\) を,速さ \(v\) で割る。

    \(T = \)\(\dfrac{2\pi r}{v}\)

\(v =\;\)\(\sqrt{\dfrac{GM}{r}}\) \(T =\;\)\(2\pi\sqrt{\dfrac{r^3}{GM}}\)
\(v\)〔m/s〕:衛星の速さ
\(T\)〔s〕:公転周期
\(r\)〔m〕:軌道半径(地球の中心から)
🔥 ここが超重要

\(T\) の式を 2 乗すると,ケプラーの第三法則が出てくる。

$$ T^2 = \dfrac{4\pi^2}{GM}\,r^3 $$

\(r^3\) の係数が \(k = \dfrac{4\pi^2}{GM}\)。\(k\) は中心天体の質量 \(M\) だけで決まる。

📏 軌道半径と,速さ・周期

基準(灰色)の軌道と,半径 \(r\) を何倍かにした軌道(藍色)をくらべる。

  • 🪶 質量によらない

    速さも周期も,半径だけで決まる(式に \(m\) が無い)

  • ⬆️ 軌道を高くすると

    速さは小さく,周期は長くなる

  • 🔭 半径を 4 倍にすると

    速さは 2 分の 1,周期は 8 倍

🌍 実際の衛星と静止衛星

月も「地球の衛星」で,同じ 2 本の式に乗っている。低い順に並べる。

対象
(高度)
軌道半径
(地球=1)
周期速さ
ISS
400 km
1.06 倍約90分7.7 km/s
GPS衛星
2.0万 km
4.2 倍約12時間3.9 km/s
ひまわり
3.6万 km
6.6 倍24時間3.1 km/s
月
38万 km
60 倍27.3日1.0 km/s
💡
静止衛星……地球の自転と同じ周期で,赤道の上空を自転と同じ向きに回る衛星
  • 気象衛星ひまわりは,空の一点に止まって見える
  • BS 放送の衛星も同じ。だからアンテナは,向きを動かさなくてよい
📡 豆知識:なぜ静止衛星は赤道の上空にしか置けないのか

万有引力は地球の中心を向くので,衛星の軌道面は必ず地球の中心を通る。地上の一点の真上に居続けられるのは,その点が軌道面の上にある場合だけ——つまり赤道上空に限られる。

BS 放送の衛星は東経 110 度の赤道上空にいる。東京では,南西の空・仰角およそ 38 度にアンテナを向ける。

🚀 第一宇宙速度

第一宇宙速度 \(v_1\)……地球上から発射した物体が,
地球のまわりを回り続けるための最小の速さ。

図は,ニュートンが考えた「大砲」の思考実験。高い山の上から,水平に撃ち出す速さを上げていく。

  • 🐌 遅いとき

    すぐ地面に落ちる。速くすると,落ちる場所が遠くなる

  • ⭕ \(v_1\) ちょうど

    地面が丸く下がるぶんだけ落ち,地表すれすれを回る

  • 🥚 \(v_1\) を超えると

    だ円軌道になる

衛星は落ち続けているのに,地面に届かない。

地表すれすれの円軌道では,半径は \(R\)(山の高さは無視する),向心力は地表の重力そのものだ。

\(m\dfrac{v_1^2}{R}\)\(\; = mg\)

\(v_1 = \)\(\sqrt{gR}\)
\(v_1\)〔m/s〕:第一宇宙速度
\(g\)〔m/s²〕:地表の重力加速度
\(R\)〔m〕:地球の半径

\(g = 9.8\ \text{m/s}^2\),\(R = 6.4\times10^6\ \text{m}\) を入れると,およそ 7.9 km/s になる。1 周に約 85 分かかる。

✏️ 問題:人工衛星の運動と第一宇宙速度

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⚡ 5. 万有引力による位置エネルギー

引力に逆らって運ぶには,仕事が要る。その仕事が,位置エネルギーになる。

🕳️ 位置エネルギーの式

地球(質量 \(M\))の中心から距離 \(r\) の点にある,質量 \(m\) の物体の位置エネルギー \(U\) は,次の式になる。

\(U = \)\(-G\dfrac{Mm}{r}\)
\(U\)〔J〕:万有引力による位置エネルギー
\(G\)〔N·m²/kg²〕:万有引力定数
\(M,\,m\)〔kg〕:地球・物体の質量
\(r\)〔m〕:中心間の距離

グラフにすると,地球のまわりに深い井戸ができる。距離 \(r\) の点での深さが \(U\) だ。

🔥 ここが超重要

\(U\) が負になるのは,基準(\(U = 0\))を無限遠にとったからだ。

🏋️ 導出の準備:重力による位置エネルギー

上の式は,どこから出てくるのか。まず地上の場合で,位置エネルギーの決め方を確かめる。

基準からある位置までゆっくり動かすとき,外力のした仕事が位置エネルギーとなる。
  1. 基準と道すじを決める

    地面を基準にして,高さ \(h\) までゆっくり持ち上げる。

  2. 外力を求める

    外力は重力とつりあう。\(mg\) で上向きだ。

  3. 力 × 距離を計算する

    グラフでは長方形の面積だ。

    \(U = \)\(mg \times h = mgh\)

🧮 導出:万有引力による位置エネルギー

地球から遠く離れると,力が一定でないので \(mgh\) は使えない。同じ決め方で作り直す。

  1. 基準を決める

    万有引力が 0 になる無限遠を基準にとる。

  2. 外力を求める

    距離 \(x\) の点で,万有引力とつりあう力は

    \(F = \)\(G\dfrac{Mm}{x^2}\)

  3. 仕事の大きさを数える

    曲線の下の面積だ。

    \((\text{面積}) = G\dfrac{Mm}{r}\)

  4. 仕事の符号を決める

    移動と逆向きの外力の仕事は負。

外力の仕事が位置エネルギーだから,面積に負号を付ける。

$$ U = -(\text{面積}) = -G\dfrac{Mm}{r} $$

💬 補足

地表付近(\(h \ll R\),\(R\) は地球の半径)では,\(U\) の増加は \(mgh\) に一致する(\(mgh\) は近似)。

🔬 発展:面積の求め方(細かく区切って足す/積分)

曲線 \(F = G\dfrac{Mm}{x^2}\) の下の,\(r\) から無限遠までの面積を求める。力が変わるので,細い短冊に分けて足す。

  1. 細かく区切る

    \(r\) から先を \(r_0(=r),\ r_1,\ \dots,\ r_N\) と区切る。短い区間 \(r_n\) 〜 \(r_{n+1}\) の中では,力は一定とみなせる。

  2. 短冊の高さを決める

    力の式の \(x^2\) を,両端の間の値 \(r_n r_{n+1}\) で代表させる。高さは \(\dfrac{GMm}{r_n r_{n+1}}\)。

  3. 短冊 1 本の面積を出す

    「高さ × 幅」の分子の引き算を,2 つの分数に分ける。

    $$ \dfrac{GMm}{r_n r_{n+1}}(r_{n+1}-r_n) = GMm\left(\dfrac{1}{r_n}-\dfrac{1}{r_{n+1}}\right) $$

  1. 短冊をすべて足す

    \(n = 0\) から \(N-1\) まで足すと,となり合う項が打ち消し合う。

    $$ GMm\biggl\{\biggl(\dfrac{1}{r_0}-\dfrac{1}{r_1}\biggr) $$ $$ {}+\biggl(\dfrac{1}{r_1}-\dfrac{1}{r_2}\biggr) $$ $$ {}+\cdots+\biggl(\dfrac{1}{r_{N-1}}-\dfrac{1}{r_N}\biggr)\biggr\} $$ $$ {}= GMm\biggl(\dfrac{1}{r}-\dfrac{1}{r_N}\biggr) $$

  2. 終点を無限遠にとる

    終点 \(r_N\) を限りなく遠くにとると,\(\dfrac{1}{r_N}\) は 0 になる。残る面積は \(G\dfrac{Mm}{r}\)。

短冊の幅を限りなく細くしたものが定積分(数学Ⅲ)だ。外向きを正として,外力の仕事 \(W\) を無限遠から \(r\) まで積分すると,負号まで自動的に出る。

$$ W = \int_{\infty}^{r} G\dfrac{Mm}{x^2}\,dx $$ $$ {}= \left[-G\dfrac{Mm}{x}\right]_{\infty}^{r} = -G\dfrac{Mm}{r} $$

✏️ 問題:万有引力による位置エネルギー

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🚀 6. エネルギー保存と第二宇宙速度

地球の引力を振り切るには,どれだけの速さが要るか。エネルギーの保存から求める。

ボールを真上に投げると必ず落ちてくる。どんなに速く投げても,必ず戻ってくるのだろうか?
ある速さを超えると戻ってこない
どんなに速くても必ず戻ってくる
空気が無ければ必ず戻ってくる
万有引力は距離とともに弱まるので,ある速さを超えると戻ってこない。その境目の速さをこのカードで求める。

🔁 力学的エネルギー保存則

地球(質量 \(M\))から万有引力だけを受けて動く,質量 \(m\) の物体を考える。

距離も速さも変わるが,変わらない量がある。

万有引力は保存力(仕事が道すじによらない力)。万有引力だけを受けて運動する物体の力学的エネルギーは一定に保たれる。
$$ E = \dfrac{1}{2}mv^2 + \left(-G\dfrac{Mm}{r}\right) = \text{一定} $$
\(E\)〔J〕:力学的エネルギー
第 1 項:運動エネルギー \(K\)
第 2 項:位置エネルギー \(U\)

問題を解くときは,2 つの位置を等号で結ぶ(位置エネルギーに \(mgh\) は使わない)。

\(\dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r} = \)\(\dfrac{1}{2}mv'^2 - G\dfrac{Mm}{r'}\)

🔬 発展:運動方程式から保存則を導く(微分)

「保存力だから」で済ませず,運動方程式から直接確かめる。地球から真上に遠ざかる場合で考える。

  1. 運動方程式を書く

    外向きを正とする。万有引力は内向きなので

    $$ m\dfrac{dv}{dt} = -G\dfrac{Mm}{r^2} $$

  2. 両辺に \(v\) を掛ける

    \(v = \dfrac{dr}{dt}\) を掛けると,左辺は運動エネルギーの変化率,右辺は \(G\dfrac{Mm}{r}\) の変化率になる。

    $$ \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2\right) = \dfrac{d}{dt}\left(G\dfrac{Mm}{r}\right) $$

  3. 右辺を移項してまとめる

    右辺を左辺へ移すと,1 つの量の変化率にまとまる。

    $$ \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r}\right) = 0 $$

時間で微分して 0 = 時間がたっても変わらない。これが力学的エネルギー保存則だ。向きを変えながら回る運動でも,同じ結果になる。

🌌 無限遠まで行ける条件

無限遠では,位置エネルギーが 0 になる。残るのは,そこでの速さ \(v_\infty\) の運動エネルギーだけだ。

$$ E = \dfrac{1}{2}mv_\infty^2 \;\geqq\; 0 $$

\(E\) は途中で変わらない。打ち上げた瞬間の \(E\) で行き先が決まる(図は,真上に打ち上げた場合)。

  • ↩️ \(E < 0\) —— 引き戻される

    \(E\) と \(U\) の交点より先へは行けない。軌道は円・だ円

  • 🎚️ \(E = 0\) —— 境目

    無限遠で,ちょうど速さが 0 になる。軌道は放物線

  • 🕊️ \(E > 0\) —— 飛び去る

    無限遠でも速さが残る。軌道は双曲線

🔥 ここが超重要

無限遠まで行ける条件は \(E\)\({}\geqq 0\)。最小の速さで行く境目が \(E\)\({}= 0\)。

💡 もう一歩:「無限遠で速さ 0」なのに,なぜ落ちてこないのか

\(E = 0\) のときの速さ \(v\) を,保存則から求めて確かめる。

  1. 速さを式で表す

    保存則で \(E = 0\) とおき,\(v\) について解く。

    $$ \dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r} = 0 $$ $$ \Longrightarrow\quad v = \sqrt{\dfrac{2GM}{r}} $$

  2. 遠くでの値を見る

    \(r\) をどれだけ大きくしても,\(v\) は 0 にならない。

  3. \(E < 0\) の場合とくらべる

    \(E < 0\) なら有限の距離で止まる。\(E\) を 0 に近づけると,その距離はどこまでも遠くなる。

「無限遠で速さ 0」は,到達して止まる点ではない。止まる場所がないのだ。

💨 第二宇宙速度

第二宇宙速度 \(v_2\)……地球上から発射した物体が,
無限の遠方に飛んでいくための最小の速さ。

その境目は \(E = 0\) なので,地表と無限遠で保存則を立てる。

  1. 地表と無限遠をくらべる

    地表は距離 \(R\)・速さ \(v_2\)。無限遠では \(U\) も速さも 0。

    \(\dfrac{1}{2}mv_2^2 - G\dfrac{Mm}{R} = \)\(0\)

  2. \(v_2\) について解く

    \(GM = gR^2\) も使うと,\(g\) と \(R\) だけで書ける。

\(v_2 =\;\)\(\sqrt{\dfrac{2GM}{R}}\) \(\phantom{v_2} =\;\)\(\sqrt{2gR}\)
\(v_2\)〔m/s〕:第二宇宙速度(脱出速度)
\(g\)〔m/s²〕:地表の重力加速度の大きさ
\(R\)〔m〕:地球の半径

🪐 2 つの宇宙速度をくらべる

最小の速さ立てる式結果
第一 \(v_1\)
回り続ける
運動方程式
(万有引力=向心力)
\(\sqrt{gR}\)
約 7.9 km/s
第二 \(v_2\)
無限の遠方へ
エネルギー保存
(無限遠で \(E = 0\))
\(\sqrt{2gR}\)
約 11.2 km/s

地面と平行に打ち出す速さ \(v_0\) を 7.9 km/s から上げていくと,軌道はだ円にふくらみ,11.2 km/s で閉じなくなる。

戻ってくるか飛び去るかは,\(E\) の符号だけで決まる。打ち出す向きによらないのは,\(E\) の式に速さ \(v\) と距離 \(r\) しか入っていないからだ。

🛰️ もう一歩:円軌道を回る衛星の力学的エネルギー(\(E = -\dfrac{GMm}{2r}\))

半径 \(r\) の円軌道を回る衛星(質量 \(m\))の力学的エネルギー \(E\) を,\(r\) だけで表す。

  1. 運動方程式から \(K\) を出す

    両辺に \(\dfrac{r}{2}\) を掛ける。

    $$ m\dfrac{v^2}{r} = G\dfrac{Mm}{r^2} $$ $$ \Longrightarrow\quad K = \dfrac{1}{2}mv^2 = \dfrac{GMm}{2r} $$

  2. 位置エネルギーを足す

    \(U = -\dfrac{GMm}{r}\) を足す。

    $$ E = \dfrac{GMm}{2r} - \dfrac{GMm}{r} = -\dfrac{GMm}{2r} $$

  • \(E\) は負……衛星は地球に束縛されている
  • \(K\) は \(U\) の深さの半分……どの半径でも変わらない

地球の引力を振り切るには,この \(E\) を 0 まで上げるだけのエネルギーを足せばよい。

✏️ 問題:エネルギー保存と第二宇宙速度

問題を読み込んでいます…

🎯 7. 入試対策

よく出る設定を,立式のしかたと考える順序で押さえる。

🧮 ① だ円軌道の連立(面積速度+エネルギー保存)

質量 \(M\) の天体を回る,質量 \(m\) の物体を考える。近日点での距離と速さを \(r_{\text{近}}, v_{\text{近}}\),遠日点では \(r_{\text{遠}}, v_{\text{遠}}\) とする。距離から,速さを求める。

近日点と遠日点で,面積速度一定とエネルギー保存を連立する
  1. 式を 2 本立てる

    面積速度一定(この 2 点では \(\tfrac{1}{2}rv\))と,力学的エネルギー保存を書く。未知数 2 つに,式が 2 本そろう。

    $$ r_{\text{近}}v_{\text{近}} = r_{\text{遠}}v_{\text{遠}} $$

    $$ \dfrac{1}{2}mv_{\text{近}}^2 - G\dfrac{Mm}{r_{\text{近}}} $$ $$ {}= \dfrac{1}{2}mv_{\text{遠}}^2 - G\dfrac{Mm}{r_{\text{遠}}} $$

  2. \(v_{\text{遠}}\) を消去し,因数分解して解く

    第 1 式から

    \(v_{\text{遠}} = \dfrac{r_{\text{近}}}{r_{\text{遠}}}\,v_{\text{近}}\)

    これを第 2 式に入れ,\(v_{\text{近}}\) について解く。

    $$ v_{\text{近}} = \sqrt{\dfrac{2GMr_{\text{遠}}}{r_{\text{近}}(r_{\text{近}}+r_{\text{遠}})}} $$

    \(v_{\text{遠}}\) は,「近」と「遠」を入れ替えた形になる。

🧮 ② 静止衛星の高度

静止衛星の軌道半径 \(r\) と高度 \(r - R\) を求める。地球の半径を \(R\),自転の周期を \(T\)(24 時間)とする。

第三法則で \(r\) を出し,\(GM\) は \(gR^2\) に置き換える(\(G, M\) の値は使わない)
  1. 条件を読み取る

    周期は自転と同じ \(T\) なので,\(r\) が 1 つに決まる。

  2. 第三法則を \(r^3\) について解く

    $$ \dfrac{T^2}{r^3} = \dfrac{4\pi^2}{GM} $$ $$ \Longrightarrow\quad r^3 = \dfrac{GMT^2}{4\pi^2} $$

  3. \(GM\) を \(gR^2\) に置き換える

    \(r^3 = \)\(\dfrac{gR^2T^2}{4\pi^2}\)

数値を入れると \(r \fallingdotseq 4.2\times10^7\ \text{m}\)。高度 \(r - R\) は約 3.6 万 kmで,衛星の質量によらない。

🧮 ③ 連星(重心まわりの円運動)

質量 \(m_1, m_2\) の 2 つの星が距離 \(L\) を保ち,共通の重心のまわりを同じ角速度 \(\omega\) で回る。周期 \(T\) を求める。

  1. 星 1 の円運動の半径 \(r_1\)

    重心は,2 星の間を質量の逆比に分ける。

    $$ r_1 = \dfrac{m_2}{m_1+m_2}L $$

  2. 星 1 の運動方程式を立てる

    向心力は万有引力で,距離には \(L\) を使う。

    \(m_1 r_1 \omega^2 = \)\(G\dfrac{m_1 m_2}{L^2}\)

  1. \(r_1\) を代入して,周期に直す

    両辺を \(m_1 m_2\) で割り,\(T = \dfrac{2\pi}{\omega}\) を使う。第三法則と同じ形になる。

    $$ \omega^2 = \dfrac{G(m_1+m_2)}{L^3} $$ $$ \Longrightarrow\quad T^2 = \dfrac{4\pi^2}{G(m_1+m_2)}L^3 $$

🔥 ここが超重要

万有引力の距離は \(L\),円運動の半径は重心からの距離。半径に \(L\) を使うのが,いちばん多い間違い。

🧮 ④ 地球トンネル

地球(質量 \(M\)・半径 \(R\)・密度一様)の中心を通るトンネルを考える。中心から距離 \(r\) にある質量 \(m\) の物体の運動を調べる。

  1. 引く部分を見きわめる

    引くのは,半径 \(r\) の球の内側だけ(質量 \(M_r\))。

  2. 内側の質量 \(M_r\) を求める

    密度が一様なので,質量は体積に比例する。

    $$ M_r = M\dfrac{r^3}{R^3} $$

  1. 力を \(r\) で表す

    中心から外向きを正とする。万有引力の式には,地球全体の \(M\) ではなく \(M_r\) を入れる(\(GM = gR^2\) を使う)。

    $$ F = -G\dfrac{M_r m}{r^2} $$ $$ {}= -\dfrac{GMm}{R^3}r = -\dfrac{mg}{R}r $$

  2. 運動を見抜き,周期を出す

    \(F = -Cr\)(\(C = \dfrac{mg}{R}\) は定数)の形なので,運動は単振動になる。

    $$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{C}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{R}{g}} $$ $$ {}\fallingdotseq 5.1\times10^3\ \text{s} $$

約 85 分で,地表すれすれを回る衛星の周期と同じになる(図の緑の点が,その衛星)。

🔬 発展:なぜ内側の質量だけで決まるのか(球殻定理)

(a) 球殻は,内側の物体を引かない。一様な球殻の内側の点 \(\mathrm{P}\) から,向かい合う細い円すいを 2 本引く。切り取る面を \(\mathrm{A}, \mathrm{B}\),\(\mathrm{P}\) からの距離を \(a, b\) とする。

  • 円すいの開きは同じ。面の広さ(=質量)は距離の 2 乗に比例し,\(a^2 : b^2\)
  • 引力は「質量 ÷ 距離の 2 乗」に比例する。比は \(\dfrac{a^2}{a^2} : \dfrac{b^2}{b^2} = 1 : 1\)
  • 2 つの引力は同じ大きさで逆向きなので,打ち消し合う
  • どの向きの円すいの組でも同じ。球殻全体からの引力は 0 になる

(b) 球殻は,外側の物体を「全質量が中心にある」のと同じ力で引く。こちらの証明には積分が要るので,結果だけ使う。

(c) だから,内側の質量だけが効く。地球を,薄い球殻を何枚も重ねたものと考える。中心から \(r\) の物体にとって,\(r\) より外の殻は (a) で 0,内の殻は (b) で中心の質点と同じ。残るのは半径 \(r\) の球の質量 \(M_r\) だけ。

✏️ 問題:入試対策

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🔑 まとめ