物理 > 第1編 力と運動 > 第4章 円運動と万有引力
惑星は太陽のまわりをどう回るのか。答えは,3 つの規則にまとまる。
観測 → 規則 → 原因 → 定数の測定の順に,200 年以上かけて進んだ。
ケプラーはティコの助手だった。火星の軌道を円と仮定して計算すると,角度で 8 分(0.13°)だけ観測と合わない。
ティコの観測の精度は約 2 分。「ティコが 8 分も間違えるはずがない」と,このズレを本物だと信じたことが,円を捨ててだ円にたどり着く出発点になった。
ケプラーは火星の観測記録から,軌道が円ではないと突き止めた。太陽があるのは中心ではなく焦点だ。
近日点では速く,遠日点では遅い
同じ時間に通過した面積は,形が違っても広さは同じ
太陽 \(\mathrm{S}\) を回る惑星が,\(\Delta t\) の間に \(\mathrm{P}\) から \(\mathrm{P}'\) へ進む。
底辺は \(r\)。高さは \(v\sin\theta\,\Delta t\)(\(\theta\):動径と速度のなす角)。
$$ \Delta S = \dfrac12 \times r \times v\sin\theta\,\Delta t $$
近日点(距離 \(r\)・速さ \(v\))と遠日点(距離 \(R\)・速さ \(V\))では \(\sin\theta = 1\)。1 秒間に通過するのは,直角三角形だ。
\(\dfrac{1}{2}rv = \)\(\dfrac{1}{2}RV\)
この形が使えるのは,速度が動径に垂直な2 点だけ。
つねに 1 点を向く力(中心力)なら,第二法則は成り立つ。
中心力とは,つねに決まった 1 点を向く力のこと。太陽が惑星を引く万有引力は,いつも太陽を向くので中心力だ。
力がなければ等速直線運動で,通過する面積は毎回同じになる。中心力が変えるのは,速度の動径方向の成分だけ。この成分は三角形の高さを変えないので,面積速度は変わらない。
力の大きさが距離によってどう変わっても,中心力でありさえすれば成り立つ。
大学では \(mrv\sin\theta\) を角運動量とよぶ。面積速度一定は,角運動量保存の法則と同じ内容だ。
道のりが長いうえに,動きも遅い
外側の半長軸がいくつでも,比の値は内側と同じ
周期 \(T,\ T'\),半長軸 \(a,\ a'\) の 2 つの惑星を,式で結ぶ。
\(\dfrac{T^2}{a^3} = \)\(\dfrac{T'^2}{a'^3}\)
\(k\) は宇宙共通の定数ではない。\(k\) は中心天体の質量で決まる(理由は「人工衛星」で導く)。
天文単位(記号 au)は,地球と太陽の平均距離を 1 とする長さの単位(\(1\ \text{au} = 1.5 \times 10^{11}\ \text{m}\))。
半長軸を au,周期を年ではかると,地球は \(a = 1,\ T = 1\)。だから太陽を回る天体では \(k = 1\) となる。
$$ T^2 = a^3 \qquad (\,a\ \text{は au,}\ T\ \text{は年}\,) $$
| 惑星 | \(a\)〔au〕 | \(T\)〔年〕 | \(\dfrac{T^2}{a^3}\) |
|---|---|---|---|
| 水星 | 0.387 | 0.241 | 1.00 |
| 地球 | 1.000 | 1.000 | 1.00 |
| 火星 | 1.524 | 1.881 | 1.00 |
| 木星 | 5.203 | 11.86 | 1.00 |
ハレー彗星の半長軸は約 18 au。彗星も太陽を回るので,同じ式が使える。
$$ T = \sqrt{a^3} = \sqrt{18^3} \fallingdotseq 76 \text{ 年} $$
実際の周期(約 76 年)と合う。半長軸が分かれば,周期を予言できる。
ケプラーは「どう動くか」を見つけた。「なぜ」を与えたのがニュートンだ。
問題を読み込んでいます…
りんごは落ちるのに,月はなぜ落ちてこないのか。2 つは,同じ 1 つの力で説明できる。
ニュートンはケプラーの法則から逆に,太陽が惑星を引く力 \(F\) の形を割り出した。惑星(質量 \(m\))は,半径 \(r\)・周期 \(T\) の等速円運動とみなす。
角速度を \(\omega\) とする。
\(F = \)\(mr\omega^2\)
1 周 \(2\pi\) を,周期 \(T\) で回る。
\(\omega = \)\(\dfrac{2\pi}{T}\)
\(F = \)\(mr\left(\dfrac{2\pi}{T}\right)^2 = \dfrac{4\pi^2 m r}{T^2}\)
\(T^2 = kr^3\) を代入する(円軌道では \(a = r\))。
\(F = \)\(\dfrac{4\pi^2 mr}{kr^3} = \dfrac{4\pi^2}{k}\cdot\dfrac{m}{r^2}\)
作用反作用の法則より,惑星も太陽を同じ力で引く。だから太陽の質量 \(M\) も,同じ形で効く。
ニュートンは,この力を太陽と惑星だけのものとは考えなかった。
図は,2 つの物体が引き合う力。下のグラフは,力 \(F\) と距離 \(r\) の関係だ。
いつも同じ長さ・逆向きになる
距離が 2 倍で力は 4 分の 1,3 倍で 9 分の 1
\(M\) か \(m\) を半分にすると,力も半分
距離 \(r\) は,物体の中心と中心の間ではかる(球形の天体は,全質量が中心にある点とみなせる)。
ふつうは微分方程式を解くが,速度ベクトルの動きに目を移すと,ほとんど計算せずに見えてくる。ファインマンが講義で紹介した筋を,5 段でたどる。
使うのは,運動方程式と面積速度一定の 2 つだけ。\(\hat r\) は太陽から惑星へ向かう単位ベクトル,\(\theta\) は太陽から見た惑星の方向の角,\(h\) は面積速度の 2 倍だ。
$$ \frac{\Delta \vec v}{\Delta t} = -\frac{GM}{r^2}\hat r, $$ $$ r^2 \frac{\Delta\theta}{\Delta t} = h\ (\text{一定}) $$
「時間あたり」ではなく「角度あたり」で速度の変化を見る。2 式を割り算すると \(r^2\) が消える。
$$ \frac{\Delta \vec v}{\Delta \theta} = -\frac{GM}{h}\,\hat r $$
距離 \(r\) が消えたのは,力が \(\dfrac{1}{r^2}\) だからだ(これが逆二乗の指紋)。
右辺の大きさは定数 \(\dfrac{GM}{h}\)。\(\theta\) が同じだけ進むごとに,速度ベクトルは同じ長さだけ太陽の向きへ倒れる。
惑星が 1 周する間に \(\hat r\) は 1 回転するので,速度ベクトルの先端は円を描く(この円をホドグラフという)。ある固定ベクトル \(\vec c\) と,\(\hat r\) に垂直な単位ベクトル \(\hat\theta\) を使って書けば
$$ \vec v = \vec c + \frac{GM}{h}\,\hat\theta $$
速度の \(\hat\theta\) 方向の成分は \(\dfrac{h}{r}\) なので,上の式の \(\hat\theta\) 成分をとる。角 \(\theta\) を \(\vec c\) に垂直な向きから測り,\(\vec c\) の大きさを \(c\) とすると
$$ \frac{h}{r} = \frac{GM}{h} + c\cos\theta $$ $$ \Longrightarrow\quad r = \dfrac{\dfrac{h^2}{GM}}{1 + \dfrac{ch}{GM}\cos\theta} $$
これは焦点を原点にした円錐曲線の式だ。\(\dfrac{ch}{GM}\) が離心率 \(e\) にあたり,\(e<1\) ならだ円,\(e=1\) なら放物線,\(e>1\) なら双曲線になる。
\(G\) はとても小さい。引力が目立つのは,相手が天体のときだけだ。
初めて測ったのはキャベンディッシュ(1798)。地球の質量も,これで計算できた。
はじめの問いの答え:月も地球へ落ち続けている。
ケプラーの法則=経験則,万有引力の法則=その原因。迷ったら,運動方程式に万有引力を入れる。
ニュートンは,月を回す力と,りんごを落とす力が同じものかを数で確かめた。
天(月)と地(りんご)を,同じ 1 つの式で書いたことになる。
「りんごが頭に落ちて思いついた」は後世の脚色。本人が語ったのは,りんごが落ちるのを見て「なぜ月は落ちてこないのか」と考えた,という話だ。
問題を読み込んでいます…
月では,同じ初速で 6 倍高く跳べる。「重さ」の正体は,足もとの天体の万有引力だ。
重力加速度 \(g\) を,地球の質量 \(M\) と半径 \(R\) で表す。地表に,質量 \(m\) の物体を置く。
全質量が中心にあるとみなす。距離は \(R\)。
自転の遠心力を無視すると,重力 \(mg\) =万有引力。
\(mg = \)\(G\dfrac{Mm}{R^2}\)
両辺を \(m\) で割ると,
\(m\) が消えた。\(g\) は物体の質量によらない——軽い物も重い物も,同じように落ちる。
分母を払った \(GM = \)\(gR^2\) は,このあと何度も使う。式の \(GM\) を,\(g\) と \(R\) で書きかえられる。
地上の物体は,地球と一緒に自転している。地上から見ると,万有引力のほかに遠心力もはたらく。
緯度 \(\theta\) の地点で,質量 \(m\) の物体にはたらく遠心力の大きさ \(f\) を求める。自転の角速度を \(\omega\) とする。
自転軸のまわりの円の半径は \(R\cos\theta\)。
\(f = \)\(mR\omega^2\cos\theta\)
赤道で最大,極でゼロになる。
赤道でも,万有引力の約 290 分の 1 しかない。
結論:遠心力はごく小さい。だから問題では,重力 \(\fallingdotseq\) 万有引力としてよい。
遠心力がいちばん大きい赤道(\(\cos\theta = 1\))で,万有引力の大きさ \(F\) とくらべる。
\(g = \dfrac{GM}{R^2}\) より \(F = mg\) だから,
$$ \dfrac{f}{F} = \dfrac{mR\omega^2}{mg} = \dfrac{R\omega^2}{g} $$
\(R \fallingdotseq 6.4\times10^{6}\ \text{m}\)。自転は 1 日(\(8.64\times10^{4}\ \text{s}\))に 1 回転なので \(\omega \fallingdotseq 7.3\times10^{-5}\ \text{rad/s}\)。
$$ R\omega^2 \fallingdotseq 0.034\ \text{m/s}^2 $$
\(g = 9.8\ \text{m/s}^2\) で割ると
$$ \dfrac{f}{F} \fallingdotseq \dfrac{0.034}{9.8} \fallingdotseq \dfrac{1}{290} $$
実測の \(g\) は極で約 9.83,赤道で約 9.78 m/s²。同じ体重計でも,赤道のほうがわずかに軽く出る。
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人工衛星は,なぜ落ちてこないのか。運動方程式で調べる。
地球(質量 \(M\))の中心から半径 \(r\) の円軌道を,質量 \(m\) の衛星が速さ \(v\) で回る。
中心向きの力は,図の赤い矢印だけ。
\(m\dfrac{v^2}{r}\)\(\; = G\dfrac{Mm}{r^2}\)
両辺に \(\dfrac{r}{m}\) を掛け,\(m\) を消す。
\(v^2 = \)\(\dfrac{GM}{r}\)
1 周の長さ \(2\pi r\) を,速さ \(v\) で割る。
\(T = \)\(\dfrac{2\pi r}{v}\)
\(T\) の式を 2 乗すると,ケプラーの第三法則が出てくる。
$$ T^2 = \dfrac{4\pi^2}{GM}\,r^3 $$
\(r^3\) の係数が \(k = \dfrac{4\pi^2}{GM}\)。\(k\) は中心天体の質量 \(M\) だけで決まる。
基準(灰色)の軌道と,半径 \(r\) を何倍かにした軌道(藍色)をくらべる。
速さも周期も,半径だけで決まる(式に \(m\) が無い)
速さは小さく,周期は長くなる
速さは 2 分の 1,周期は 8 倍
月も「地球の衛星」で,同じ 2 本の式に乗っている。低い順に並べる。
| 対象 (高度) | 軌道半径 (地球=1) | 周期 | 速さ |
|---|---|---|---|
| ISS 400 km | 1.06 倍 | 約90分 | 7.7 km/s |
| GPS衛星 2.0万 km | 4.2 倍 | 約12時間 | 3.9 km/s |
| ひまわり 3.6万 km | 6.6 倍 | 24時間 | 3.1 km/s |
| 月 38万 km | 60 倍 | 27.3日 | 1.0 km/s |
万有引力は地球の中心を向くので,衛星の軌道面は必ず地球の中心を通る。地上の一点の真上に居続けられるのは,その点が軌道面の上にある場合だけ——つまり赤道上空に限られる。
BS 放送の衛星は東経 110 度の赤道上空にいる。東京では,南西の空・仰角およそ 38 度にアンテナを向ける。
図は,ニュートンが考えた「大砲」の思考実験。高い山の上から,水平に撃ち出す速さを上げていく。
すぐ地面に落ちる。速くすると,落ちる場所が遠くなる
地面が丸く下がるぶんだけ落ち,地表すれすれを回る
だ円軌道になる
衛星は落ち続けているのに,地面に届かない。
地表すれすれの円軌道では,半径は \(R\)(山の高さは無視する),向心力は地表の重力そのものだ。
\(m\dfrac{v_1^2}{R}\)\(\; = mg\)
\(g = 9.8\ \text{m/s}^2\),\(R = 6.4\times10^6\ \text{m}\) を入れると,およそ 7.9 km/s になる。1 周に約 85 分かかる。
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引力に逆らって運ぶには,仕事が要る。その仕事が,位置エネルギーになる。
地球(質量 \(M\))の中心から距離 \(r\) の点にある,質量 \(m\) の物体の位置エネルギー \(U\) は,次の式になる。
グラフにすると,地球のまわりに深い井戸ができる。距離 \(r\) の点での深さが \(U\) だ。
\(U\) が負になるのは,基準(\(U = 0\))を無限遠にとったからだ。
上の式は,どこから出てくるのか。まず地上の場合で,位置エネルギーの決め方を確かめる。
地面を基準にして,高さ \(h\) までゆっくり持ち上げる。
外力は重力とつりあう。\(mg\) で上向きだ。
グラフでは長方形の面積だ。
\(U = \)\(mg \times h = mgh\)
地球から遠く離れると,力が一定でないので \(mgh\) は使えない。同じ決め方で作り直す。
万有引力が 0 になる無限遠を基準にとる。
距離 \(x\) の点で,万有引力とつりあう力は
\(F = \)\(G\dfrac{Mm}{x^2}\)
曲線の下の面積だ。
\((\text{面積}) = G\dfrac{Mm}{r}\)
移動と逆向きの外力の仕事は負。
外力の仕事が位置エネルギーだから,面積に負号を付ける。
$$ U = -(\text{面積}) = -G\dfrac{Mm}{r} $$
地表付近(\(h \ll R\),\(R\) は地球の半径)では,\(U\) の増加は \(mgh\) に一致する(\(mgh\) は近似)。
曲線 \(F = G\dfrac{Mm}{x^2}\) の下の,\(r\) から無限遠までの面積を求める。力が変わるので,細い短冊に分けて足す。
\(r\) から先を \(r_0(=r),\ r_1,\ \dots,\ r_N\) と区切る。短い区間 \(r_n\) 〜 \(r_{n+1}\) の中では,力は一定とみなせる。
力の式の \(x^2\) を,両端の間の値 \(r_n r_{n+1}\) で代表させる。高さは \(\dfrac{GMm}{r_n r_{n+1}}\)。
「高さ × 幅」の分子の引き算を,2 つの分数に分ける。
$$ \dfrac{GMm}{r_n r_{n+1}}(r_{n+1}-r_n) = GMm\left(\dfrac{1}{r_n}-\dfrac{1}{r_{n+1}}\right) $$
\(n = 0\) から \(N-1\) まで足すと,となり合う項が打ち消し合う。
$$ GMm\biggl\{\biggl(\dfrac{1}{r_0}-\dfrac{1}{r_1}\biggr) $$ $$ {}+\biggl(\dfrac{1}{r_1}-\dfrac{1}{r_2}\biggr) $$ $$ {}+\cdots+\biggl(\dfrac{1}{r_{N-1}}-\dfrac{1}{r_N}\biggr)\biggr\} $$ $$ {}= GMm\biggl(\dfrac{1}{r}-\dfrac{1}{r_N}\biggr) $$
終点 \(r_N\) を限りなく遠くにとると,\(\dfrac{1}{r_N}\) は 0 になる。残る面積は \(G\dfrac{Mm}{r}\)。
短冊の幅を限りなく細くしたものが定積分(数学Ⅲ)だ。外向きを正として,外力の仕事 \(W\) を無限遠から \(r\) まで積分すると,負号まで自動的に出る。
$$ W = \int_{\infty}^{r} G\dfrac{Mm}{x^2}\,dx $$ $$ {}= \left[-G\dfrac{Mm}{x}\right]_{\infty}^{r} = -G\dfrac{Mm}{r} $$
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地球の引力を振り切るには,どれだけの速さが要るか。エネルギーの保存から求める。
地球(質量 \(M\))から万有引力だけを受けて動く,質量 \(m\) の物体を考える。
距離も速さも変わるが,変わらない量がある。
問題を解くときは,2 つの位置を等号で結ぶ(位置エネルギーに \(mgh\) は使わない)。
\(\dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r} = \)\(\dfrac{1}{2}mv'^2 - G\dfrac{Mm}{r'}\)
「保存力だから」で済ませず,運動方程式から直接確かめる。地球から真上に遠ざかる場合で考える。
外向きを正とする。万有引力は内向きなので
$$ m\dfrac{dv}{dt} = -G\dfrac{Mm}{r^2} $$
\(v = \dfrac{dr}{dt}\) を掛けると,左辺は運動エネルギーの変化率,右辺は \(G\dfrac{Mm}{r}\) の変化率になる。
$$ \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2\right) = \dfrac{d}{dt}\left(G\dfrac{Mm}{r}\right) $$
右辺を左辺へ移すと,1 つの量の変化率にまとまる。
$$ \dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r}\right) = 0 $$
時間で微分して 0 = 時間がたっても変わらない。これが力学的エネルギー保存則だ。向きを変えながら回る運動でも,同じ結果になる。
無限遠では,位置エネルギーが 0 になる。残るのは,そこでの速さ \(v_\infty\) の運動エネルギーだけだ。
$$ E = \dfrac{1}{2}mv_\infty^2 \;\geqq\; 0 $$
\(E\) は途中で変わらない。打ち上げた瞬間の \(E\) で行き先が決まる(図は,真上に打ち上げた場合)。
\(E\) と \(U\) の交点より先へは行けない。軌道は円・だ円
無限遠で,ちょうど速さが 0 になる。軌道は放物線
無限遠でも速さが残る。軌道は双曲線
無限遠まで行ける条件は \(E\)\({}\geqq 0\)。最小の速さで行く境目が \(E\)\({}= 0\)。
\(E = 0\) のときの速さ \(v\) を,保存則から求めて確かめる。
保存則で \(E = 0\) とおき,\(v\) について解く。
$$ \dfrac{1}{2}mv^2 - G\dfrac{Mm}{r} = 0 $$ $$ \Longrightarrow\quad v = \sqrt{\dfrac{2GM}{r}} $$
\(r\) をどれだけ大きくしても,\(v\) は 0 にならない。
\(E < 0\) なら有限の距離で止まる。\(E\) を 0 に近づけると,その距離はどこまでも遠くなる。
「無限遠で速さ 0」は,到達して止まる点ではない。止まる場所がないのだ。
その境目は \(E = 0\) なので,地表と無限遠で保存則を立てる。
地表は距離 \(R\)・速さ \(v_2\)。無限遠では \(U\) も速さも 0。
\(\dfrac{1}{2}mv_2^2 - G\dfrac{Mm}{R} = \)\(0\)
\(GM = gR^2\) も使うと,\(g\) と \(R\) だけで書ける。
| 最小の速さ | 立てる式 | 結果 |
|---|---|---|
| 第一 \(v_1\) 回り続ける | 運動方程式 (万有引力=向心力) | \(\sqrt{gR}\) 約 7.9 km/s |
| 第二 \(v_2\) 無限の遠方へ | エネルギー保存 (無限遠で \(E = 0\)) | \(\sqrt{2gR}\) 約 11.2 km/s |
地面と平行に打ち出す速さ \(v_0\) を 7.9 km/s から上げていくと,軌道はだ円にふくらみ,11.2 km/s で閉じなくなる。
戻ってくるか飛び去るかは,\(E\) の符号だけで決まる。打ち出す向きによらないのは,\(E\) の式に速さ \(v\) と距離 \(r\) しか入っていないからだ。
半径 \(r\) の円軌道を回る衛星(質量 \(m\))の力学的エネルギー \(E\) を,\(r\) だけで表す。
両辺に \(\dfrac{r}{2}\) を掛ける。
$$ m\dfrac{v^2}{r} = G\dfrac{Mm}{r^2} $$ $$ \Longrightarrow\quad K = \dfrac{1}{2}mv^2 = \dfrac{GMm}{2r} $$
\(U = -\dfrac{GMm}{r}\) を足す。
$$ E = \dfrac{GMm}{2r} - \dfrac{GMm}{r} = -\dfrac{GMm}{2r} $$
地球の引力を振り切るには,この \(E\) を 0 まで上げるだけのエネルギーを足せばよい。
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よく出る設定を,立式のしかたと考える順序で押さえる。
質量 \(M\) の天体を回る,質量 \(m\) の物体を考える。近日点での距離と速さを \(r_{\text{近}}, v_{\text{近}}\),遠日点では \(r_{\text{遠}}, v_{\text{遠}}\) とする。距離から,速さを求める。
面積速度一定(この 2 点では \(\tfrac{1}{2}rv\))と,力学的エネルギー保存を書く。未知数 2 つに,式が 2 本そろう。
$$ r_{\text{近}}v_{\text{近}} = r_{\text{遠}}v_{\text{遠}} $$
$$ \dfrac{1}{2}mv_{\text{近}}^2 - G\dfrac{Mm}{r_{\text{近}}} $$ $$ {}= \dfrac{1}{2}mv_{\text{遠}}^2 - G\dfrac{Mm}{r_{\text{遠}}} $$
第 1 式から
\(v_{\text{遠}} = \dfrac{r_{\text{近}}}{r_{\text{遠}}}\,v_{\text{近}}\)
これを第 2 式に入れ,\(v_{\text{近}}\) について解く。
$$ v_{\text{近}} = \sqrt{\dfrac{2GMr_{\text{遠}}}{r_{\text{近}}(r_{\text{近}}+r_{\text{遠}})}} $$
\(v_{\text{遠}}\) は,「近」と「遠」を入れ替えた形になる。
静止衛星の軌道半径 \(r\) と高度 \(r - R\) を求める。地球の半径を \(R\),自転の周期を \(T\)(24 時間)とする。
周期は自転と同じ \(T\) なので,\(r\) が 1 つに決まる。
$$ \dfrac{T^2}{r^3} = \dfrac{4\pi^2}{GM} $$ $$ \Longrightarrow\quad r^3 = \dfrac{GMT^2}{4\pi^2} $$
\(r^3 = \)\(\dfrac{gR^2T^2}{4\pi^2}\)
数値を入れると \(r \fallingdotseq 4.2\times10^7\ \text{m}\)。高度 \(r - R\) は約 3.6 万 kmで,衛星の質量によらない。
質量 \(m_1, m_2\) の 2 つの星が距離 \(L\) を保ち,共通の重心のまわりを同じ角速度 \(\omega\) で回る。周期 \(T\) を求める。
重心は,2 星の間を質量の逆比に分ける。
$$ r_1 = \dfrac{m_2}{m_1+m_2}L $$
向心力は万有引力で,距離には \(L\) を使う。
\(m_1 r_1 \omega^2 = \)\(G\dfrac{m_1 m_2}{L^2}\)
両辺を \(m_1 m_2\) で割り,\(T = \dfrac{2\pi}{\omega}\) を使う。第三法則と同じ形になる。
$$ \omega^2 = \dfrac{G(m_1+m_2)}{L^3} $$ $$ \Longrightarrow\quad T^2 = \dfrac{4\pi^2}{G(m_1+m_2)}L^3 $$
万有引力の距離は \(L\),円運動の半径は重心からの距離。半径に \(L\) を使うのが,いちばん多い間違い。
地球(質量 \(M\)・半径 \(R\)・密度一様)の中心を通るトンネルを考える。中心から距離 \(r\) にある質量 \(m\) の物体の運動を調べる。
引くのは,半径 \(r\) の球の内側だけ(質量 \(M_r\))。
密度が一様なので,質量は体積に比例する。
$$ M_r = M\dfrac{r^3}{R^3} $$
中心から外向きを正とする。万有引力の式には,地球全体の \(M\) ではなく \(M_r\) を入れる(\(GM = gR^2\) を使う)。
$$ F = -G\dfrac{M_r m}{r^2} $$ $$ {}= -\dfrac{GMm}{R^3}r = -\dfrac{mg}{R}r $$
\(F = -Cr\)(\(C = \dfrac{mg}{R}\) は定数)の形なので,運動は単振動になる。
$$ T = 2\pi\sqrt{\dfrac{m}{C}} = 2\pi\sqrt{\dfrac{R}{g}} $$ $$ {}\fallingdotseq 5.1\times10^3\ \text{s} $$
約 85 分で,地表すれすれを回る衛星の周期と同じになる(図の緑の点が,その衛星)。
(a) 球殻は,内側の物体を引かない。一様な球殻の内側の点 \(\mathrm{P}\) から,向かい合う細い円すいを 2 本引く。切り取る面を \(\mathrm{A}, \mathrm{B}\),\(\mathrm{P}\) からの距離を \(a, b\) とする。
(b) 球殻は,外側の物体を「全質量が中心にある」のと同じ力で引く。こちらの証明には積分が要るので,結果だけ使う。
(c) だから,内側の質量だけが効く。地球を,薄い球殻を何枚も重ねたものと考える。中心から \(r\) の物体にとって,\(r\) より外の殻は (a) で 0,内の殻は (b) で中心の質点と同じ。残るのは半径 \(r\) の球の質量 \(M_r\) だけ。
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